2018 年 23 巻 1-2 号 p. 45-52
再生可能エネルギーによる発電手法の一つである地熱発電は、我が国に豊富に存在する国産エネルギーとして、脱化石資源や温室効果ガス削減のみならず、エネルギーの安定供給の観点からも期待されている。地熱資源は、火山性の地熱地帯が存在する山岳地にポテンシャルがあり、国立・国定公園の区域と重なっているところが多い。また、地熱発電は、自然環境への影響が建設工事の段階のみならず事前の試験井掘削等の段階からも発生し、操業段階においても追加の補充井の掘削が行われる場合が多いという特性がある。さらに、温泉の湧出量の減少、温度の低下、成分の変化等が懸念されることも多い。地熱発電事業は、このように自然環境への影響が考えられることから、環境アセスメントを通じて、環境保全措置を検討し、環境配慮を事業に組み込んでいく必要がある。一方、再生エネルギー促進の観点からは、環境アセスメント手続き期間の短縮も課題となっている。国立・国定公園内での地熱開発に当たっては、調査や工事の手法、規模、期間等に応じて、風致景観や自然環境に影響が発生しないよう適切な環境配慮が必要である。地熱開発に伴う温泉資源保護については、科学的情報(モニタリングデータの蓄積・解析等)の提示や温泉事業者と地熱開発事業者の間における適切なコミュニケーション(説明、対話、協議等)が重要である。