地域における環境・経済・社会の様々な課題を解決し,持続可能な社会づくりを進めるには各種の取組による様々な分野の将来にわたる効果を考慮した施策立案が有用と思われる。そこで本研究ではステークホルダーと分析グループによる双方向型の将来シナリオ構築プロセスと,そこで利用する地域統合評価モデルを用いた定量的な将来像の描写と取組による総合的な効果の事前的な推計手法を開発した。推計手法においては感度分析を応用して指標の改善を複数の取組へ帰属させる計算手法と,次元の異なる様々な種類の指標の改善度合いを比較可能にするための基準化手法を新たに開発した。これを福島県新地町において活用し,同町における課題とそれに対する取組を挙げ,取組を実施したときの将来シナリオを構築した。その結果,取組の中では産業・商業に関係するものが人口維持・域内総生産・雇用に効果の大きいこと,一方で基準化された指標を比較するとエネルギー・CO2 排出量に関連する指標の改善効果が他と比べて大きいことなどが示された。