地球環境
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論文
日本における電力分野の早期の脱炭素化に向けたトランジション・ファイナンスの政策的課題
田村 堅太郎栗山 昭久
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2022 年 27 巻 2 号 p. 95-104

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抄録

 日本は2050 年ネットゼロ達成を掲げ,また,1.5℃目標に向けた努力についてもコミットしている。こうした目標達成に向けては,電力部門が他部門に先駆けて脱炭素化することが重要となり,同部門での高炭素型の事業を低・脱炭素型にスムーズに移行・転換させるような投融資スキーム(トランジション・ファイナンス)を促進することが重要となる。本稿は,日本の電力部門におけるトランジション・ファイナンス について,国際的な開示原則に照らしながら,早期の脱炭素化へ貢献する上での政策的な課題を検討し,その課題を踏まえた対応を提示することを目的とする。電力会社や金融機関がトランジション・ファイナンスを検討する際に参照することが推奨されている政策文書が1.5℃目標とは整合していないこと,2030 年以降の技術への偏重がみられること,炭素クレジットの扱いなどについての課題を指摘したのち,国,電力部門,個々の電力会社,そして金融機関に求められる対応を論じる。

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© 2022 一般社団法人国際環境研究協会
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