日本植物病理学会報
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原著
トマト黄化葉巻ウイルスの機械的接種法の確立
木村 重光
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2022 年 88 巻 4 号 p. 240-249

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抄録

トマト黄化葉巻ウイルス(tomato yellow leaf curl virus, TYLCV)によるトマト黄化葉巻病はトマト産地において深刻な被害を与えている.一般的に,TYLCVはタバココナジラミによってのみ媒介され,汁液伝染はしないとされている.しかし,TYLCVの機械的接種法が開発されれば,抵抗性トマト品種の選抜などに活用できる.本研究では,トマト退緑ウイルスを汁液の機械的接種により感染させることができた歯ブラシを用いた機械的接種法の適用を試み,TYLCV接種のための諸条件(汁液の希釈倍率,緩衝液濃度,pHなど)を検討した.TYLCVの接種35日後,トマトに特徴的な病徴が現れた.接種全株をPCRに供し感染の確認をおこなったところ,TYLCVの機械的接種による感染が確認できた.0.1%(v/v)2-メルカプトエタノール添加100 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)を用い,最終希釈倍率1000倍に調製した磨砕汁液で機械的接種をおこなった時に最も感染株率が高く,その感染株率は73.3%であった.本法はTYLCVを感受性のトマト(品種:ハウス桃太郎)へ接種するために十分活用できるものであった.

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© 2022 日本植物病理学会
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