地理科学
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日本とニュージーランドの地理とその関係
カンバーランド ケネス・B
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1967 年 7 巻 p. 1-8

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抄録

筆者は,地理学とは「どういう所であるか」ということの記述と説明であり,それは多くの実用性を持っていて全ての人に興味ある学問であること,さらにこの知識なくしては,相互理解も問題解決もできないという考えである。さて場所の特性は自然的,人文的両特質に基づくことが多いが,両国を比較すると,自然には,国土の形,大きさ,位置,地質,地形もほぼ類似しているが,気候はその位置から日本がやや大陸的なのに対し,わが国は,より海洋的で,ぽぽ年中草木の成長を可能にしている。しかし,人文的には著しく異り日本では数千年来,人間が居住してきたが,わが国では,偶然渡来したポリネシア人以来千年にもならぬし,西洋人は到着以来150年にもならない。わが国の人口は少ないが国民1人当40〜50(羊単位)頭の家畜がいて,安価な土地で一般に粗放的経営を行ないヨーロパ市場で競争できている。一方日本は人口の著しい集中,急速な都市化,工業化で,わが国ではとうてい採算のあわぬ価格の耕地で食糧生産を行なっている現状である。ここに両国間の経済交流の基礎があり結局それは両国の地理的相違に由来する。日本は従来より多くの羊毛・チーズ・バター・マトン・ラムを輸入し,わが国は戦後国内で軽工業化したので戦前の繊維・雑貨類に代り発電機・放送機械設備・建築資材など重工業製品を輸入し,ことに最近5年間の発展はめざましい。かって貿易の70%を占めていたイギリスとの伝統的関係が今後20年の間には日本にとってかわられるであろう。残る問題は日本人の食生活の変化と国際政治,経済事情のみである。発展してきた経済のみならず諸方面での交流が障害により阻まれないことを願うとともに日本,オーストラリア,ニュージーランドは経済ブロックの発展により西太平洋経済圏の建設を考えざるをえないかもしれないと思われる。

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