地理科学
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研究ノート
デリー首都圏における工業労働市場とワーカーの経済生活
――自動車系と軽工業系の比較考察――
友澤 和夫陳 林古屋 辰郎NURY Iftakhar
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2018 年 73 巻 1 号 p. 1-20

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抄録

デリー首都圏の工業化は,自動車系と軽工業系(アパレル,繊維など)の雇用を大きく拡大させたが,前者では非正規化が顕著に進行したのに対して,後者でその水準は低く留まる。本稿は,ハリヤーナー州最大の工業団地IMTマネサールでの調査結果により,自動車系の非正規ワーカーと軽工業系のワーカーは,出身地や賃金水準を同じくしており,基本的には同一の労働市場にあることを導き出す。両者の間には差異も認められる。それは,自動車系においては企業側が労働力を若く,新しい状態に保ちたい意向をもつため,軽工業系よりも入れ替わりが激しいことにより生じている。経済生活面では,ワーカーは住居費や食料費を抑制し,手取り収入の40%程度をウッタル・プラデーシュ州やビハール州の農村部に住む家族へ送金していることが注目される。送金は家族の生活費のみならず,教育費や耐久消費財の購入にも充てられ,彼らが置かれている条件不利性を軽減する可能性も有していると考えられる。制約がある中で,インド工業化の恩恵を引き出そうとするワーカーの営為が明らかとなった。

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