本稿では,石川県金沢市の用水路の水音を対象に,地域住民が音をどのように聞き取り,特徴づけているのかを明らかにした。まず,対象とする音を定量的に把握するため,音圧レベル測定と音聞き調査を行った。その結果,環境省の定める騒音レベルを超える大きな音が堰から鳴っていることが明らかとなった。また,街路や建物など,街の形状によって音の聞こえる範囲が異なっていること,流量の変化により季節で音の範囲が変わることが示された。次に,住民の音環境の認識を明らかにするため,アンケート調査とグループインタビュー調査を行った。その結果,住民らは意識的に用水路の音は聞いていないが,無意識下で評価をくだしていた。これは,住民らにとって用水路の音が基調音となっていることを示唆している。また,音の評価は,住民の生活との関わりの中で行われていることが明らかとなった。