2020 年 75 巻 3 号 p. 164-173
本稿では,1945年枕崎台風と2018年西日本豪雨の土石流被害を受けた広島県江田島市切串地区を対象として,2022年度より始まる「地理総合」で実施可能な防災や現地調査に関する授業を実践した。
この授業は,事前調査と現地調査,事後調査の3つに分けられ,事前調査では空中写真を用いた土石流のマッピング,被災写真の撮影位置の特定などを行った。現地調査では,被災写真と同じ画角の写真を撮影し,住民への聞き取り調査や被災した地物の観察に基づき,土石流の被害を把握した。事後作業では,現地調査の整理,ポスター発表を行った。
授業で行った活動は,「地理総合」で生徒に身につけさせるべき知識・能力のすべてをカバーできている。また,生徒らの授業後の感想からは,過去の甚大な被害を知ることで避難の重要性や事前の対策を行う必要性に気づく意見などがあり,本稿で行った授業は「地理総合」で行う内容としてふさわしいと判断される。