本稿では、北京口語を対象に、仮定接続詞“如果”、“要是”を用いた2つの条件文について、プロトタイプ理論の観点から、それらの典型的用法と周辺的用法を考察し、併せてその用法の拡張過程について分析する。分析の過程で以下のことを明らかにする。“如果”文、“要是”文は、実現不確定な事態や反事実的事態の仮定を表す典型的用法から、習慣的事態や時間関係を表す条件提示の用法へと拡張する。条件提示の条件文の前節は、現実世界で起こり得る2つの事態から1つの事態が選ばれて提示される〈条件選択性〉を有する。さらに“要是”文については、条件提示用法から、メタファーによる話題提示の用法への拡張がみられる。話題提示の条件文の前節は、談話世界における2つ以上の話題から1つの話題が選ばれて提示される〈話題選択性〉を有する。その話題には、時間表現が多いという特徴がみられる。