2011 年 2011 巻 258 号 p. 174-193
本稿では、中国語の条件文において、接続詞が如何なる場合に用いられるのか、或いは用いられないのかを、文が表す事態の特徴に照らして考察する。その上で、接続詞を文法上必要としないタイプの条件文であるにも関わらず、接続詞が用いられている場合、それらはなぜ用いられるのかを談話文法の観点から分析し、それらの機能を明らかにする。分析の結果、接続詞の使用の可否には、話し手の事態の実現可能性に対する認識が関わることが分かる。一般に、反事実など、実現性が低い事態には接続詞が用いられ、逆に、実現前提、パタン化した事態、原理原則など、事態の実現性が高い事態には接続詞が用いられない。ただし、事態の実現性の高い条件文にも接続詞が用いられる場合があるが、それらの接続詞の一部は、「仮定」の意味を表すとともに、聞き手が予測し難い「条件」が談話に導入されることを、聞き手に対して喚起する〈条件導入喚起〉の談話機能を担っている。