2014 年 2014 巻 261 号 p. 26-45
本稿は、動詞目的語を担った不定名詞句が数量表現により有標化されるようになる過程を論じたものである。具体的には、唐五代の『降魔変文』『舜子変』『伍子胥変文』を主要資料とし、主題(topic)としての継続性を有する不定名詞目的語および空間存在文の目的語に対する悉皆調査を行い、「数詞+名詞」「数詞+量詞+名詞」「名詞+数詞+量詞」といった有標形式や数量表現を伴わない無標形式の用例数を提示した上で、これらの形式の意味機能の差異を明らかにすることを試みる。そして「個別性の際立ち」「属性記述」という二つの意味特徴の有無により、各形式が対立をなしているとの仮説を提出し、数量表現が不定性と密接な関係を持つようになる過程についても初歩的な検討を行う。