抄録
化学反応や分子の性質を理解するために、分子内の化学結合の強さに関する情報は大きな役割を果たす。当研究室ではこの化学結合の強さを評価する一つの方法として、全エネルギーを構成原子および結合の寄与へと分割することで、分子内のすべての結合エネルギーを1回の量子化学計算で見積る手法、結合エネルギー密度解析を開発してきた。本研究ではこの手法をすべての結合を同時に考慮できるように一般化した。また従来の手法では強い共有結合と弱い水素結合などが共存している分子系において、過適合による数値的不安定性がみられた。そこで本研究では幾つかの解法を用いて数値検証を行った。その結果、正則化項を導入したLASSO回帰を用いることにより数値的不安定性を回避し、かつ多重結合を含む共有結合やそれ以外の弱い分子の結合に対しても結合の強弱を表現できることが確認された。