抄録
【はじめに】ヒトが姿勢を保つために脳幹は重要な役割を果たしている。今回、橋出血患者の評価に動作解析装置等を加え治療展開の一指標としたので報告する。【症例紹介】18歳の男性で、診断名は脳幹部海綿状血管腫による右橋背側部出血。平成12年6月左上下肢のしびれにて発症、他院にて上記診断され、麻痺・痺れ感完治し経過フォロー中。平成14年2月9日より左上下肢のしびれが再び出現増悪、再出血認められた。2月26日血腫増大のため血管腫摘出術施行。3月20日当院受診外来リハビリテーション開始。来院時の状態:上下肢に左>右で軽度の麻痺が認められ、体幹・左上下肢に軽度から中等度の失調症状が認められた。右外転神経麻痺・右内側縦束症候群・顔面神経麻痺も認められた。立位は肩幅開脚にて30秒程度静的保持可能。移動には車椅子使用し、歩行は不可。日常生活は排泄以外介助を要していた(FIM:89点)。【評価方法】一般評価に加えコンピュータによる立位平衡機能検査及び歩行可能となった後に動作解析装置による歩行分析を行った。平衡機能検査の測定は肩幅開脚立位を開・閉眼共に30秒間行い、閉脚立位可能となってからは閉脚にて行った。測定機器は静的重心動揺システムG-5500(アニマ社製)を用い、サンプリング周波数20Hzにて計測。歩行分析の測定は三次元動作解析装置LocusMA-6250(アニマ社製)を用い、サンプリング周波数60Hz、5秒間にて4台のカメラによる撮影を行った。マーカーは頭頂・両側肩峰・股関節・膝裂隙・外果・第5中足骨頭の計11箇所とし、設置した5m歩行路を自由歩行させた。【治療】体幹・左上下肢の失調症状の減弱及び筋緊張低下やそれに伴う頚部・右上下肢の過剰活動による異常姿勢筋緊張を修正し、視覚を用いた姿勢変換の中で徒手的な感覚入力や抗重力筋群による姿勢コントロールへの援助などを本人に意識させることから開始した。視覚と運動のマッチィングや感覚情報を運動につなげて姿勢制御を行なうなかで、立位・歩行へ結びつけていくことを考えた。特に坐位・立位の場面でリズミカルな左右方向への体重移動を行い体幹機能を促通し、体幹などの立ち直り反応なども含めた、姿勢バランス反応を引き出した。【結果及び経過及び考察及びまとめ】初期時平衡機能検査では、開眼・閉眼の動揺差が大きく視覚による代償が示唆された。治療開始1ヶ月、短距離独歩が可能になり、開閉眼の動揺差が逆転した。そのころより嘔吐等が出現し、視覚と平衡機能の回復の解離が伺えた。その後、開閉眼の動揺差の再逆転が起こり嘔吐も見られなくなった。その後外来通院週5回を1回にてフォローし8ヵ月後正常の動揺となる(治療開始6ヶ月後大学復学・FIM:125点)。また、歩行もその経過にあわせ身体の動揺が減少した。そして何よりこれら検査結果を本人にフィードバックすることにより、本人・家族の精神的フォローにつながった。今回科学的結果に基づき治療や精神的フォローが行えた。