抄録
[目的]脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)を対象に、片麻痺患者が駆動可能な回転速度である40r/minと、さらに高回転である60r/minの2条件で自転車エルゴトレーニングを施行し、回転速度の違いが片麻痺患者の脚伸展筋力および歩行能力に与える影響について検討した。[対象]対象は、発症から8ヶ月以上経過し、杖・装具の使用に関係なく500m以上の自立歩行が可能で、さらに当院まで公共機関を利用しての自立通院が可能な片麻痺患者10例とした。対象例を、当院へ訪れた順に、トレーニング条件である40r/min群5例(男性:3例、女性:2例、平均年齢:56.4歳、発症からの期間:34.1ヶ月 、診断:脳出血:3例、脳梗塞:2例、障害側:右片麻痺:1例、左片麻痺:4例、麻痺側下肢Brunnstrom stageIV:2例、V:3例、歩行は、杖・SHB使用:2例、SHBのみ:1例、独歩:2例)と60r/min群5例(男性:3例、女性:2例、平均年齢:64.0歳、発症からの期間:17.7ヶ月 、診断:脳出血:2例、脳梗塞:3例、障害側:右片麻痺:1例、左片麻痺:4例、麻痺側下肢Brunnstrom stageIV:1例、V:4例、歩行は、杖・SHB使用:2例、杖のみ:2例、独歩:1例)の2群に分類した。[方法]トレーニングの前後計2回、3日以内に、1)麻痺側および非麻痺側の脚伸展筋力の測定、2)歩行能力の測定を施行した。1)脚伸展筋力の測定は、三菱電機(株)社製StrengthErgo.240を使用し、回転速度40r/minおよび60r/minの測定条件で3回転を3施行とした。3施行の内、各下肢の仕事量[KJ]の最大値を下肢筋力として採用した。2)歩行能力の測定は、a)10m歩行時間(秒)と歩数(歩)、b)7.5mの8の字歩行路時間(秒)、c)Timed up and goテスト(秒)、d)6分間歩行距離(m)をそれぞれ最大努力で施行した。トレーニングには、StrengthErgo.240(Isokineticモード)を使用し、各群における回転速度は、40r/minおよび60r/minとした。1回のエルゴ駆動時間は15分、頻度は週5回、全15回とし、トレーニング中の主観的運動強度は、全症例Borg scaleで12から13レベルとした。尚、1回のトレーニングの前後には両下肢筋(股関節内転筋群、大腿四頭筋、ハムストリング、下腿三頭筋)に対し、約1分間のストレッチを施行した。トレーニング中対象例には、コンピュータ画面上に表示される設定回転数線に出来るだけ追従するようにエルゴ駆動を行わせた。トレーニング期間中、各対象例の日常の活動性には特に制限を与えなかった。トレーニングの前後での各測定項目の統計処理には、二元配置分散分析を使用した。[結果・考察]全15回のトレーニングの前後で、1)麻痺側脚伸展筋力は、両群共に40r/min、60r/minで有意に増加し、非麻痺側脚伸展筋力では、60r/minで有意な増加を認めた(P<0.05)。一方、2)歩行能力では、両群共に全ての測定項目で有意な改善を認めた(P<0.05)。今回の結果から、40r/min、60r/minどちらのトレーニング条件でも片麻痺患者の麻痺側脚伸展筋力ならびに歩行能力を改善するものと思われた。