理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BO459
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運動・神経生理
Central pattern generator modelに基づいたクラスタ解析による失調症の協調運動障害の特徴
*松尾 善美淺井 義之野村 泰伸水庫 功井上 悟佐藤 俊輔米田 稔彦三木 明徳阿部 和夫
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抄録

【はじめに】我々はパーキンソン病(PD)患者の下肢協調運動障害を脊髄レベルでのcentral pattern generator(CPG) modelより解析し、運動障害の分類を試み、報告してきた。今回は失調症での下肢協調運動障害に対する理学療法の介入方法について検討する目的で、左右独立駆動型エルゴメーター(三菱電機社製ストレングスエルゴ240、以下SE)による回転数の左右位相差を下肢協調運動障害の指標とし、我々がこれまでに報告したPDにおけるクラスタ分類との異同について検討した。
【対象・方法】失調症患者13名(OPCA7名、DRPLA2名、MJD・SCAtype8・アルコール性失調症・不明各1名、男性7名、女性6名、平均年齢52.8±16.7歳)に対してSEを用いた40回転/分の左右独立アシストモードでの6分間の運動を行った。運動開始直後と運動終了直前を除く24データの全左右回転数より振幅変調の分散、位相差の平均と分散、左右回転速度間の単回帰直線の傾きの平均と分散の5指標を算出し、PDから得た5次クラスタ空間へ配置した。さらに各指標がクラスタ分類の適否に与える影響についてノンパラメトリック検定を行った。
【結果】クラスタ分類より、常に左右の振幅は一定し、180°の位相差を示す健常者群と同じ第1クラスタに12データが、90°の位相差を示す第2クラスタに2データが分類された。左右の位相差が0°から360°まで変動するクラスタ3、あるいは両側の振幅が同期し位相差が棘波状に不規則に変調するクラスタ4、などPDでは見られたクラスタに分類されたデータは存在しなかった。しかし、位相差の分散はPD群より大きい傾向が認められた(p<.006)。
【考察】位相差が特徴的に不規則に変化するが第3および第4クラスタに分類されるデータがPDでは存在するのに対して、失調症では存在しなかったことより、PDと失調症では運動の不安定となる原因が異なることを示唆している。さらにデータを増やし、失調症の協調運動障害の特徴を特定することが今後課題である。
【結語】失調症の協調運動障害はPDとは異なり、位相差が不規則に変化することはないが、位相差の分散が大きいことが特徴であることが示された。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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