抄録
【目的】 呼吸筋力低下に対するトレーニングには、呼吸負荷器を用いた方法を行うことが一般的である。そのうち圧閾値負荷法は流量負荷法と並んで好んで用いられる方法の1つである。呼吸筋力は肺気量によって変化するが、この影響により呼吸筋力が圧閾値負荷を下回り呼吸運動が持続できない、あるいは呼吸基準位が変化する可能性があると考えた。そのため我々は圧閾値負荷法の1つであるThresholdを用いた呼吸負荷運動中の換気量変化と換気量から計算される各肺気量での予測最大口腔内圧を、肺気量分画測定の手技を応用した方法で検討した。【方法】 対象は健康若年者(男性7名、年齢21.57±2.30歳、PImax=104.26±18.41cmH2O、PEmax=105.53±15.29cmH2O)ですべて非喫煙者である。最大吸気口腔内圧を残気量位、最大呼気口腔内圧を全肺気量位で測定した。その後Thresholdを直列にスパイロメーターに接続し、無負荷および7段階の強さのThreshold吸気および呼気負荷下での肺気量分画を測定した。負荷量はThreshold内部のネジ1回転を1段階とした。計測は各段階ごとに数回の練習の後、60秒程度計測した。得られた肺気量分画のパラメーターより、吸気開始時の予測PImaxおよび吸気終了時の予測PImax、呼気開始時の予測PEmaxおよび呼気終了時の予測PEmaxを計算した。【結果】 肺気量分画の負荷圧による主効果は認められなかった。さらに各負荷圧での肺気量分画は、無負荷時に比較して吸気負荷、呼気負荷とも若干の変化があるものの、統計学的には有意ではなかった。また予測PImaxおよびPEmaxはいずれの肺気量でもどの負荷圧よりも十分に強かった。【考察】 肺気量分画の各パラメーターが有意に変化しなかったのは、今回の負荷量が最大口腔内圧に比べ十分に低いため、Thresholdの負荷が個体の呼吸基準位の変動を超えるような影響を与えなかったと考えられる。さらにいずれの負荷圧においても、吸気終末肺気量位や呼気終末肺気量位での予測PImaxおよびPEmaxは負荷圧に対して十分に高く、推奨される負荷圧である30%PImaxでも呼吸基準位を変化させることなく持続することが可能であると考えられる。