理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: MO037
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義肢・装具
慢性期脳卒中片麻痺患者の下肢装具の使用状況
*遠藤 綾子伊東 元
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抄録
【目的】慢性期脳卒中片麻痺患者が下肢装具を適切に使うことを検討するために、長期療養型病棟で入院する脳卒中片麻痺患者に対して、下肢装具の使用状況と使用状況に関連すると思われる質問項目を作成し聞き取り調査を行い、下肢装具の使用状況に影響する要因の検討を行う。【方法】調査の対象は、平成14年8月から10月の期間で長期療養型病棟に入院していた慢性期の脳卒中片麻痺患者で、長下肢装具もしくは短下肢装具を所持していた患者、および作製したが所持していなかった患者、合計10名であった。対象者に下肢装具の使用状況と使用状況に影響が予想される質問項目で聞き取り調査を行った。【結果】対象者は男性7名女性3名で、平均年齢は63.2歳で年齢の範囲は53歳から84歳であった。下肢の麻痺の程度はBrunnstrom stageでIIIレベル9名、IVレベル1名であった。調査時、下肢装具を所持していた人が8名、所持していなかった人が2名であった。下肢装具を所持していた人8名の下肢装具の種類は金属支柱付き靴型短下肢装具3名、プラスチック製短下肢装具2名、金属支柱付き短下肢装具が1名、金属支柱付き長下肢装具が1名、金属支柱付き靴型長下肢装具1名であった。下肢装具の使用状況は離床時に常時装着している「常時使用群」3名、「選択的使用群」3名、「未使用群」5名の3群に分類された。調査より、「下肢装具を足にあてる」、「装着の微調整をする」などの下肢装具を用いた動作が「未使用群」が「常時使用群」と「選択的使用群」に比較してできない傾向にあった。対象者の中で外泊の機会があるのは3名であった。そのうち「選択的使用群」1名は外泊先にて下肢装具の使用状況が「常時使用」に変化し、移動手段が車椅子から歩行に変化していた。さらに、「未使用群」1名は下肢装具の使用状況は変化しないが、移動手段が車椅子から車椅子と歩行に変化していた。「選択的使用群」と「未使用群」にそれらの使用状況を選択した理由を調べると、「身体機能の変化による歩行の制限」、「下肢装具の使用目的のとらえ方」、「理学療法士の関り方」が主な理由としてまとめられた。【考察】結果より、慢性期脳卒中片麻痺患者の下肢装具の使用状況に影響する要因を検討すると、「下肢装具装着のため動作能力」は下肢装具の使用状況によって変化する可能性もあるが、使用状況に影響する要因である可能性が考えられた。「身体機能の変化による歩行の制限」、「下肢装具の使用目的のとらえ方」、「理学療法士の関り方」は相互に関係を持ちながら下肢装具の使用状況に影響する可能性が考えられた。「外泊の機会」は外泊先の住居環境を介して下肢装具の使用状況に影響する可能性が考えられた。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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