抄録
【はじめに】肩関節の理学療法を行う場合,各疾患においてその理学療法内容に相違があるが,肩関節周囲の筋疲労を考慮しながら理学療法を行うことについては共通し,重要である。近年,筋疲労に関しては筋硬度との関連性についての研究が報告されている。表層筋の硬度を反映し簡便で再現性が高い測定法であるスプリング式硬度計を用いて,体表から触知しやすく筋腹面積の広い三角筋に焦点を当て,肩関節外転運動における筋疲労と筋硬度特性について若干の知見を得たので報告する。【対象】対象は現在及び過去に肩関節疾患の既往がない健常成人29名であった。年齢は平均40.1±9.7歳,性別は女性12名,男性17名,身長は平均163±7.9cm,体重は平均62.1±12.6kgであった。また利き手は対象全員が右利きであった。【方法】測定肢は左右両側とし,筋硬度測定には高分子株式会社製アスカーFP型を用いた。負荷前の三角筋筋腹中央部の筋硬度を座位にて肩関節外転90度,肘関節0度,前腕回内回外中間位で3回測定し,その平均値を安静時筋硬度とした。筋力測定はOG技研社製MUSCULATOR GT30を用い,圧センサーは被検者の前腕末梢部になるよう調整しアームに取り付けた。被検者はシートに着座し,体幹と大腿部を固定した後,筋硬度測定と同様の肢位で,前腕をアームに装着した。負荷前に肩関節外転時の最大努力筋力を3回測定し,その最大値を被検者の最大筋力100%MVCとした。100%MVC測定後筋疲労を出現させるため,負荷は4秒間の肩関節外転最大等尺性収縮,3秒間の休止時間にて肩外転運動が遂行できなくなるまで繰り返し行い,収縮時の筋力と休止時の三角筋硬度を測定した。データは負荷前に得られた値を基準値とし運動負荷中の筋出力,筋硬度の経時的変化を算出し,肩関節外転運動における筋疲労と筋硬度の関連性をPearsonの相関係数を用いて,それぞれ解析した。【結果】負荷前の三角筋硬度は右側平均40.7±10.5,左側平均38.9±11.2であった。100%MVCは右側平均8±3.1kg,左側平均7.6±3.2kgであった。運動継続回数は右側平均11±3.7回,左側平均10.8±3.8回であった。%MVCの経時的変化と筋硬度間において右側r=-0.53(p<0.05),左側r=-0.92(p<0.01)と負の相関が認められた。筋硬度上昇率と%MVC間では右側r=-0.87(p<0.01),左側ではr=-0.84(p<0.01)と負の相関が認められた。三角筋硬度上昇率は右側81.6±15.4%,左側で94.6±46.9%で右側と比較し左側が高い値を示しているが,統計学的には有意差を認めなかった。【考察およびまとめ】負荷前は右利き手側の三角筋硬度,100%MVC,運動継続回数が高値を示し,負荷の最中は左非利き手側が硬度上昇率で高値を示した。三角筋における筋疲労と筋硬度は反比例し,筋硬度評価は肩関節外転運動での三角筋においても筋疲労との関係を評価する為に有用である事が示された。