理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP207
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運動・神経生理
強縮収縮時における萎縮筋の収縮特性
*大西 智也藤野 英己武田 功祢屋 俊昭仁木 恵子
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抄録
【目的】骨折後などのギプス固定や長期臥床による骨格筋の不活動によって筋は急速に萎縮する。その主な要因として筋の収縮活動量の減少や張力負荷の低下があると言われている。このような状態は不活動によって生じた廃用性萎縮としてとらえることができる。不活動状態が長期間続いたときの骨格筋の特性については、これまで多くの動物を用いたモデル実験が行われている。萎縮したときのヒラメ筋の最大張力は低下することは多くの研究から解明されている。しかし、最大張力に達するまでの張力変化に関する研究は少ない。そこで、萎縮筋に強縮を与えたときの最大張力の1/2に達するまでの時間(1/2立ち上がり時間)と最大張力が発揮されるのに要する時間(最大張力発揮時間)を測定し、後肢懸垂による後肢の不使用によって生じた萎縮筋とギプス固定によって生じた萎縮筋の相違について検討した。【対象と方法】10から12週齢のWistar系雄ラット15匹を使用した。これらのラットを無作為に後肢懸垂群(HS群)5匹、ギプス固定群(CAST群)5匹と対照群(CONT群)5匹の3群に分類した。HS群はMoreyの変法を用いて後肢懸垂の負荷を、CAST群は足関節最大底屈位でギプス固定の負荷を2週間行った。負荷後、ラットを麻酔して左後肢のヒラメ筋を摘出した。摘出ヒラメ筋は37℃のクレブス液中(95%O2、5%CO2の混合ガス注入)で保生した。摘出ヒラメ筋腱の両側を結紮した糸で一端を固定し、他端を張力トランスジューサのフックに吊るした。トランスジューサを歪増幅器に接続し、収縮曲線を記録した。刺激電極には2枚の白金板(約2×5mm)を用いて、摘出筋の長軸と平行となるようにサンドイッチ状に留置した。電気刺激には最大刺激電圧の2倍の矩形波刺激(持続時間1msec)を用いて、80Hzで1秒間筋に与えた。刺激波形及び収縮曲線は4kHzでA/D変換してコンピュータに記録した。実験終了後に筋湿重量を測定した。【結果と考察】相対湿重量比(ヒラメ筋湿重量(mg)/体重(g))はHS群が0.39±0.02、CAST群が0.37±0.02となり、CONT群の0.54±0.01に対して有意な減少を示した。最大張力はCONT群の138.9±7.4gに対してHS群は75.0±4.7g、CAST群は50.1±3.7gと有意に減少した。1/2立ち上がり時間を最大張力発揮時間で除した結果、CONT群の6.5±0.2%に対し、CAST群は7.6±1.0%と延長する傾向を示したが、HS群は5.0±0.2%と有意に短縮した。1/2立ち上がり時間は筋力発揮速度の有用な指標となり、多くの筋線維を同時に収縮させる能力に関係があると言われている。つまり、CAST群、HS群の2群は最大発揮張力がCONT群よりも減少したが、CAST群は筋力発揮速度が低下し、逆にHS群の筋力発揮速度は増加した。このようなことから、HS群では刺激に対する反応性の向上がみられ、加重されやすい状態に変化したと考えられるが、CAST群では刺激に対する反応性の低下が生じ、筋線維を同時に収縮させる能力の低下が示唆される。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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