理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 150
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理学療法基礎系
安定性による歩行姿勢の変化
体幹筋力の影響
*中村 綾子大渕 修一佐藤 春彦上出 直人二見 俊郎
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キーワード: 姿勢, 安定性, 体幹筋力
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抄録

【目的】高齢者の姿勢の特徴として、脊柱の変形による円背、体幹の前傾や肘関節、膝関節を曲げた屈曲姿勢など加齢による身体アライメントの変化が挙げられる。こうした高齢者に特有の姿勢は、背筋力の低下と関連があるという報告がある一方、身体の重心位置を低くし安定性を得るための代償である可能性も示唆されている。そこで本研究では、安定性と姿勢の関係、および体幹筋力の影響を検討した。
【方法】対象は地域在住高齢者10名(平均72.5±2.4歳)。三次元画像解析装置(OPTOTRAK:Northern Digital社)を用い、外後頭隆起、第7頸椎棘突起、第8胸椎棘突起に赤外線発光マーカーを貼り付け、さらに仙骨部には赤外線発光マーカーを5つ貼り付けたアルミ板をベルクロにて固定した。静止立位、定常歩行、不安定歩行における頭部、頸部、体幹の位置座標を測定した。被験者は左右のベルトが分離しそれぞれ独立した制御が可能な両側分離型トレッドミル(PW-21:日立製作所)上で、ベルト速度が2.5Km/hで一定の定常歩行を1分間行った後、平均速度が定常歩行と同じ2.5Km/hとなるように、右または左のベルト速度を3.3Km/hから1.75Km/hの間でランダムに加速減速させる不安定歩行を1分間行った。解析は剛体モデルを用いて骨盤に対する頭部、頸部、体幹の平均前後位置を算出し、定常歩行、不安定歩行について静止立位からの前方変位量を姿勢の変化とした。また歩行時の安定性の指標として、骨盤部の加速度を求めた。さらに筋力測定器(MYORET RZ-450:川崎重工株式会社)を用いて体幹屈曲、伸展について等速度(60°/sec)求心性筋力を測定した。定常歩行と不安定歩行における姿勢の比較については対応のあるt検定、定常歩行と不安定歩行における姿勢変化と体幹筋力の関連についてはPearsonの相関係数を用いて検定した。
【結果】骨盤加速度は、定常歩行に比べ不安定歩行で有意に増加した。姿勢に関しては、不安定歩行では定常歩行と比較して頭部、頸部が骨盤に対して有意に前方に変位していた。定常歩行、不安定歩行の頭部、頸部の前方変位量と体幹筋力は、屈曲、伸展筋力とも有意な相関はみられなかった。
【考察】不安定歩行における骨盤加速度は定常歩行に比べ有意に増加したことから、本研究の不安定歩行は定常歩行に比べ身体を不安定にさせていたといえる。高齢者の不安定歩行では頭部、頸部が前傾する姿勢変化がみられたが、体幹筋力の強さとは無関係であった。このことから姿勢の変化は体幹筋力とは関係なく、安定性を得るための代償である可能性が示唆された。今後は特有の姿勢変化を呈する高齢者に対してバランス機能を改善する運動介入を行い、安定性の改善により姿勢が変化するか否か検討を検討していきたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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