理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 151
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理学療法基礎系
階段昇段時の拇趾踏面間距離について
2足1段と1足1段との比較
*相馬 正之吉村 茂和寺澤 泉宮崎 純弥
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抄録

【目的】階段昇降は、日常生活でよく用いられる動作の一つである。階段昇降については、昇段様式が1足1段と2足1段とあり、蹴上げの高さや下肢に障害の程度によって対応を変化させていると考える。階段昇段の動作解析についての報告は数多くされているが、1足1段と2足1段における歩行様式の拇趾-踏面間距離(蹴上げと踏面とのなす角からの垂線上を拇趾が通過した際の拇趾と踏面の距離)の報告はされていない。今回、我々は、階段昇段時における1足1段および2足1段の拇趾-踏面間距離を比較検討したので報告する。
【方法】対象は若年者40名(平均27歳)とした。測定器具は三次元動作解析を用いた。階段は、蹴上げ5cm、踏面25cm、巾70cmの3段の階段、3段目の踏面は70cmのものを使用した。拇趾-踏面間距離の測定するため、赤外線発光ダイオード(以下、LED)は、階段の各蹴上げと踏面との角の3個所、両側拇趾背側皮膚上の2箇所、合計5箇所に貼付した。両側拇趾背側皮膚上のLEDは、拇趾先端と拇趾足底部がLEDを中心とする半径Rの円と仮定するため、安静立位にてLEDから床までの垂直距離とLEDから拇趾先端までの距離が等しくなるように貼付した。拇趾-踏面間距離の算出方法は、各蹴上げと踏面とのなす角の垂線上をLEDが通過時の値から階段の各踏面の高さおよび安静時立位時のLEDから拇趾足底部までの距離を差し引いた値とした。階段昇段時の条件は、歩行開始から2歩目を1段目の踏面に左下肢を乗せ、その後1足1段、もしくは2足1段とし、それぞれ10回施行した。拇趾-踏面間距離の測定は、1足1段が1段目の左下肢、2段目の右下肢、3段目の左下肢、2足1段が1~3段目の左下肢とし、被験者ごとに平均値を算出し、代表値とした。統計処理は有意水準5%として対応のないt検定を用いた。
【結果】1足1段の歩行様式における拇趾-踏面間距離は、1段目が3.5±0.6cm、2段目が3.1±0.7cm、3段目が3.2±0.5cmであった。2足1段の歩行様式における拇趾-踏面間距離は、1段目が5.2±1.5cm、2段目が4.7±1.2cm、3段目が3.6±1.0cmであった。2足1段の階段昇段様式は、1足1段に比べ、すべての段で拇趾-床間距離が有意に増加していた。
【考察】本結果から階段昇段時において2足1段の歩行様式は、1足1段と比較して下肢を高く挙上していること、昇段に伴い拇趾-床間距離が減少していく傾向にあることが明らかになった。下肢を高く挙上していることについては、2足1段の昇段動作が遅いため、視覚的に蹴上げ高を判断しやすいこと、今回使用した蹴上げ5cmでは、通常、健常若年者は1足1段で昇段することが予想されるが、2足1段で昇段することに不慣れなことから、意図的に下肢を高く挙上していることも考えられた。また、昇段に伴い拇趾-床間距離が減少していく傾向にあることは、1足1段の非効率的な歩行様式であっても、効率的な昇段に対応を変化させていることが考えられた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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