主催: 社団法人日本理学療法士協会
【はじめに】
我々は,第19回東海北陸理学療法学術大会において,打撃動作時のスタンスとBat head speedの関係について報告した.しかし,スタンスという指標では,打撃動作のパフォーマンス向上の指標として,十分とは言えなかった.そこで今回我々は,打撃動作に影響を与える因子として,打撃動作時の重心移動に着目し,Bat head speedとの関係について検討し,若干の知見を得たので報告する.
【対象】
某高校野球部に所属していた高校生18名(右打者14名、左打者4名).平均年齢16.50±0.50歳.平均身長170.56±5.43cm,平均体重61.97±6.00kgを対象とした.
【方法】
2001年度より定期的に実施しているメディカルチェック項目の中から,三次元動作解析器による打撃動作解析結果を用い,分析した.
動作解析には,三次元動作解析system(ヘンリージャパン株式会社製)を用いて,打撃動作を分析し,Bat head speed(m/sec),重心移動距離(m)を算出した.
重心位置は,両側腸骨稜を結んだ中点を重心位置とし,開始肢位から,テイクバック時,足部接地時の重心移動距離を,X方向(ピッチャー方向),Y方向(垂直方向),Z方向(ベース方向)にそれぞれ算出した.
統計処理は,テイクバック時,足部接地時のX,Y,Z方向への重心移動距離とBat head speedとの相関分析を行った.
【結果】
テイクバック時の重心移動距離と,Bat head speedとの関係では,X,Y,Z方向で相関関係は認められなかった.
足部接地時の重心移動距離と,Bat head speedとの関係では,X方向で有意な正の相関関係が認められた(r=0.714).Y方向では,有意な負の相関関係が認められた(r=0.487).Z方向については,相関関係は認められなかった.
【考察】
野球における打撃動作は,様々な要素から構成され,高度にプログラミングされた動作である.この様々な要素を分析していくことが,打撃動作を解析し,運動特性を捉えるためには,非常に意義深いことと考える.
今回の結果から,打撃動作時の重心移動は,足部接地時に,ピッチャー方向かつ下方へと重心移動すれば,Bat head speedの向上が期待できると考える.
今後は更なるデータ収集と共に,より詳細な解析を実施していきたい.
本学会において更に、データ解析、考察を加え詳細について報告する。