理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 277
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理学療法基礎系
少年サッカー選手における運動イメージの発達
キック動作の分析
*金森 宏山本 尚司今村 安秀
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抄録

【はじめに】
 スポーツ選手のイメージ想起における感覚モダリティの特徴として、熟練したスポーツ選手は運動イメージをより鮮明な感覚モダリティとして意識することができ、フィードバック情報としてトレーニング効果に影響を与えると考えられている。しかし、これらのイメージがどのように形成されていくかを報告したものは少ない。今回、少年期における運動イメージについて検討を行い若干の知見を得たので報告する。
【方法】
 対象はサッカーを地域のクラブチームで行っている利き足が右の小学校2年生から中学校1年生の合計64名の男子である。そのうち小学校2年生から6年生まではそれぞれ11名、13名、15名、13名、7名で中学校1年生は5名であった。この対象に「強くボールを蹴る」という運動イメージの内容を質問紙で調査した。質問紙は肩、肘、手、股、膝、足部の左右12部位を5項目(「力を入れる - 入れない」「強く - 弱く」「早く - 遅く」「まわす - 止める」「大きく - 小さく」)を7段階で評価した。その得られたデータはExcel統計2002を用い因子分析した。因子分析の詳細は、共通性の推定に相関係数の最大を用い反復推定はしていない。この得られた因子にバリマックス回転と基準化を行った。また、学年ごとの傾向を調べるため、被験者を小学校2、3、4、5年生および6年生と中学1年生を合わせた5群に分け、因子得点より各群の平均を求めた。
【結果】
 因子寄与率が高い順に第1因子から第4因子までを抽出し、寄与率は第1因子(13.13%)、第2因子(12.30%)、第3因子(11.84%)、第4因子(5.75%)であった。また因子負荷量より第1因子 - 右上肢、第2因子 - 左下肢、第3因子 - 左上肢、第4因子 - 右下肢の部位を主に示し、各因子すべてに{速さ・強さ・大きさ}の項目の関係が考えられた。各群における因子得点の平均値(第1因子、第2因子、第3因子、第4因子)は2年生(0.509, -0.266, 0.113, -0.417)、3年生(0.173, 0.222, 0.141, 0.567)、4年生(0.043, 0.422, -0.015, 0.182)、5年生(-0.070, -0.043, -0.381, -0.282)、6年生と中学1年生(-0.633, -0.570, 0.174, -0.152)となった。これより各因子の学年ごとの変化に対する近似直線を求めた結果、4因子すべてが負の傾きを示し、特に第1因子にて著明であった。
【考察】
 この結果、主要な因子は低学年から高学年になるに従い他の因子へ要素が分散される傾向を示していると考えた。運動イメージは発達により単純な構造から、複雑かつ細分化されることが考えられる。
【まとめ】
 運動イメージの発達は動作の獲得に重要な関係を示すと考えられる。今後も追跡調査を行い、パフォーマンスとの関係などを検討していきたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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