抄録
【目的】一般的に中高齢者における平衡機能は、加齢とともに低下してくることが知られており、重心動揺測定値も増加傾向にあると報告されている。しかし、これまでの重心動揺検査では総合的な評価にとどまっており、重心動揺が増加するメカニズムも解明されていない。そこで今回、重心動揺測定検出台を2台使用することによって、総合的な重心動揺測定値のほかに、左右別の下肢荷重値および左右別の重心動揺測定値が計測できる下肢荷重検査を行い、総合的な重心動揺測定値との関連性について検証したので報告する。
【方法】対象は、健常な中高年者50名(男性13名、女性37名)、平均年齢は63.6±6.8歳であった。また対照群として健常な若年者25名(男性11名、女性14名、平均年齢22.7±2.3歳)とした。
測定にはツイングラビコーダー(アニマ社製G-630)を用いた。測定肢位は静止立位にて上肢を体側に自然下垂させた。足部は裸足とし、両上前腸骨棘幅と両第1中足指節関節幅が一致するように足部間隔を設定し、両第1中足指節関節内側縁と両踵部内側縁を結ぶ線が平行になるように足部の向きを規定した。測定時間は30秒、測定回数を1回とした。評価項目は、総合的な重心動揺検査から、総軌跡長や矩形面積をはじめ12項目と、左右別の下肢荷重検査から、左右別の荷重値、軌跡長、外周面積、単位面積軌跡長、左右および前後方向動揺平均中心変位の5項目とした。分析は中高年者と若年者との間でt検定を行い、有意水準5%とした。
【結果】重心動揺測定値に関して、中高年者と若年者を比較した結果、前後方向単位軌跡長において中高年者0.6±0.2cm/s、若年者0.5±0.1cm/sと有意差が認められた。このことから加齢によって重心動揺は前後方向への重心移動距離が長くなる傾向が見受けられた。2)左右別下肢荷重値に関して、下肢荷重値が50%以上となる荷重下肢側への荷重率は中高年者が53.2±2.8%と若年者51.9±1.3%より有意に大きく、左右荷重差でも中高年者6.1±5.5%、若年者3.8±2.6%と有意差が認められた。このことから中高年者では一側下肢へ荷重偏位している傾向が窺われた。3)左右別の下肢荷重値と重心動揺との関連性について、荷重下肢側の外周面積は中高年者0.17±0.1cm2、若年者0.13±0.06cm2と中高年者が若年者と比較して有意に大きかった。
【考察】今回の結果から加齢に伴う影響として、前後方向への重心軌跡が大きくなり、かつ一側下肢への荷重が大きくなることによって重心動揺が増加傾向になると考えられた。またこの傾向は下肢荷重値が大きく支持脚の役割をもつ荷重下肢側の動揺が大きくなることによって総合的な重心動揺が増加すると推察された。
今後は立位姿勢を含めた身体特性と下肢荷重値との関連も念頭におき、検証していきたい。