抄録
【はじめに】寝たきり、あるいは寝たきりに近い寡動な要介護者に対して様々な活動の援助を行い、生活の質を向上させることはリハビリテーションにおける重要な課題の一つである。身体活動の量的側面から介入方法の効果を判定するためには、身体活動量の少ない人の身体活動を感度良く測定する方法の検討が必要である。在宅の要介護片麻痺者が日常生活で高頻度に行う動作は、寝返り動作と起き上がり動作であることを本大会(第37回)で報告した。本研究に先立ち、片麻痺者の寝返り・起き上がり動作を3次元動作解析装置にて分析したところ、垂直方向移動距離および速度が高値を示した身体部位は、健側手関節・肘頭・足関節、前頭部であった。今回は、要介護片麻痺者が高頻度に行う姿勢・動作を感度良く測定できる携帯型身体活動測定器の最適感度増幅設定と身体装着部位を知ることを目的とした。
【方法】対象は健康男性3名(年齢21歳)、機器は、3方向の加速度変化を検出する携帯型身体活動測定器Mini Motionlogger Actigraph(A.M.I社製、以下アクチグラフ)を用いた。酸素摂取量測定に呼吸代謝計測装置K4システム(Cosmed社製)を用いた。アクチグラフは感度増幅設定4パターン(A,B,C,D)とカウント法2種(ZCM,TAT)の組合せで計8パターンを検討した。Filter Rangeは全て2.0-3.0Hzである。増幅度は、A,Bは低増幅度、C,Dは高増幅度であり、閾値は、A,Cは低閾値(0.01g/rad/sec)、B,Dは高閾値(0.1g/rad/sec)である。カウント法ZCMは加速度波形が基準電位を交差した回数、TATは加速度波形が基準電位以上であった時間の合計、を出力する(サンプリング周波数10Hz)。各対象者は各パターンを1試行実施した。装着部位は前頭部、胸骨柄、臍、左手関節、左足関節とした。測定は、背臥位、端座位、立位の静止姿勢を各8分間、寝返り・起き上がり動作を各15分間行った。動作は右片麻痺者を模擬した。
【結果】各姿勢・動作の酸素摂取量は平均2.4~2.7ml/min/kgと低値で、各姿勢・動作間に差はなかった。アクチグラフの測定値(counts/min)は、カウント法ZCMとTAT間に差はなかった。静止姿勢と動作を区別でき、かつ動作をより感度良く捉えていたのは設定Aであった。動作を良く捉えた装着部位は手関節次いで足関節であった。
【考察】寝返り・起き上がり動作のような低強度の動作を数回行う場合は、酸素摂取量は測定値のばらつきの範囲に入り、姿勢や動作の違いを見るには限界があることが示唆された。アクチグラフは、四肢の動きそのものを捉えることができ、動作を定量的に測定することが可能であった。身体装着部位は手関節が動作を感度良く捉えることが示唆された。寡動な要介護片麻痺者が動いているか否かを区別するには、低増幅度低閾値の設定Aが適している可能性が示唆された。このように、加速度変化を検出する携帯型身体活動測定器は、目的に応じた使い方をする必要があると考えられた。