抄録
【目的】体力維持・増進を目的とした理学療法を施行する場合,その対象者の移動様式が歩行,車いす駆動のいずれであっても適切な運動強度の設定が非常に重要である.一般に運動強度の設定は酸素摂取量(以下,VO2)を指標として行われる.近年,歩行,走行時に携帯型加速度測定器を用いて測定される加速度とVO2の間に非常に高い相関関係が認められ,この測定器を用いてVO2を推定できると報告されている.しかし,移動様式の異なる車いす駆動については未だ明らかにされていない.本研究の目的は,携帯型加速度測定器を用いて車いす駆動中の酸素摂取量を推定できるか検討することである.
【方法】健常な男子大学生7名(年齢21.9±0.7歳、身長171.5±3.7cm、体重64.5±5.0kg)を対象とした.また,測定に先立ち本測定の趣旨を十分に説明し,同意を得たのち測定を行った.運動は体育館内に設置した一周80mのトラックを歩行・走行または車いす(以下,W/C)駆動での移動を行った.運動負荷プロトコールは3分間の安静ののち,3km/h,6km/h,7.2km/h,9km/hの速度を各3分ずつ移動する多段階負荷とした.またW/Cにおいては駆動回数を60回/分と規定した.速度を一定に保つために5m毎に設置したマーカーを一定時間ごとに通過するようにした.加速度の測定には,携帯型加速度測定器(Activetracer AC-301,GMS社製)を用い、0.2秒毎の加速度を記録した。装着部位は腸骨稜の高さで腹部中央とし,ベルトで固定した。VO2の測定には携帯型酸素消費量計を用い,breath by breath法にて測定した。各段階の最後の1分の平均値を算出し,加速度とVO2の相関係数を求めた.また,移動様式の違いによる差は共分散分析により検討を行った.
【結果および考察】歩行・走行ではVO2(ml/min/kg)=0.019×加速度+4.098 (r=0.982)となり先行研究と同様,非常に高い相関関係が認められた.W/CでもVO2(ml/min/kg)=0.063×加速度+2.454 (r=0.957)と非常に高い相関関係認められ,今回用いたプロトコールにより,加速度からVO2を推定することが可能と思われる.共分散分析の結果,歩行・走行およびW/Cの間には有意差が認められたが,この差は運動様式の差を反映しているものと考えられる.今後,脊髄損傷者などでも同様の関係式が得られるかさらに検討を加えていきたい.