理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1038
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理学療法基礎系
音楽に合わせた運動プロトコル
三味線とヒット曲での比較
*王 松小林 準永田 和宏赤星 和人永田 雅章勝川 史憲山崎 元
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抄録

【目的】
日常の理学療法で我々は脳卒中の患者に対して,自主トレーニングのプログラムとして音楽のリズムに合わせた運動を実施している.音楽のリズムに合わせた運動は患者にとって効果的かつ楽しい運動となっている.今回我々は脳卒中の高齢患者に対して,2種類の運動パターンについて,それぞれ同様のテンポだが,若者に向けたヒット曲と,比較的高齢者に向けた三味線と,曲の種類を変化させた場合の運動負荷について調べ分析したので報告する.
【方法】
対象は脳卒中患者の男性10名であった.実験の前には実験の趣旨を説明して同意を得て行い,実験結果の説明も行った.年齢、体重、身長はそれぞれ73.5±7.6才、62.4±14.2kg、158.1±6.8cmであった.測定にはコスメデ社製「テレメトリー式呼吸代謝計測装置K4システム」を用いて,呼気ガス中の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)、脂質代謝量(FAT)、および炭水化物代謝量(CHO)を測定した.測定方法としては,3~4分間程のオルゴールによる安静時間と3~4分間程の132拍/分のヒット曲と同じく132拍/分の三味線を交互に録音した自主トレ用に作成した音楽テープに合わせて,以下に挙げた2種類の体操を座位にて行った.1)膝の交互伸展運動(No1),2)手を組んで体幹の前後屈伸運動(No2).運動中は一曲ごとにBorgの自覚的運動強度RPE(ratings of perceived exertion)を測定した.データの統計的検討にはt検定を用いて,有意水準を5%とした.
【結果】
1)音楽の違いによる運動負荷に及ぼす影響,ヒット曲と比べて三味線の方がVO2は下がる傾向があるが,有意差は認めなかった.2)CHOとFATについて,No1と比べNo2はCHOの上昇が認められた,一方No1はヒット曲に合わせると,FATが有意に増加した.3)RPGについて,三味線の方が有意に低い値を示した.また,No1の方がNo2に比較して,有意に低い値を認めた.
【考察】
今回の結果から,若者向けのヒット曲に合わせても,高齢者向けの三味線に合わせても,テンポと体操が同じであれば運動強度自体はあまり変わらないことが分かった.しかし,体操によっては,若者向けの曲に合わせるか,三味線に合わせるかで,運動における脂質代謝と自覚的運動強度に差異を認めた.すなわち,No1ような大腿四頭筋訓練に近いものは,高齢者の場合,若者の曲に合わせるとより有酸素運動的な体操となる傾向があるように思われた.そして,三味線に合わせると,より筋骨格系のトレーニングの要素を加わり,自覚的には意外と楽に感じる傾向が伺われた.これは高齢者の場合,三味線の方がより馴染み深くて,体操が曲に合わせやすく,力が入りやすかったのかもしれない.今後さらに同じような条件で,若年者の反応を調べたり,男女間の違いなど様々な条件を考慮して研究を重ねて検討していきたい.

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© 2004 日本理学療法士協会
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