理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1039
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理学療法基礎系
理学療法士の役割に対する現状把握と今後の課題
通院患者を対象にした意識調査より
*田口 直彦一之瀬 巳幸阿部 博宣山口 光國
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キーワード: 意識調査, 予防, 理学療法
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抄録

【はじめに】今回我々は,地域密着型の整形外科クリニックにおける患者の意識調査を行い,理学療法士の役割に対する現状把握と今後の課題について検討したので報告する。
【対象と方法】平成15年10月現在,当院通院中の整形疾患患者(150名)を対象に,1)通院状況,2)理学療法への関心度,3)加齢に伴う自覚的身体変化,4)健康管理の関心度についてアンケート施行。調査は無記名にて紙面によるものとした。
【結果】回答の得られた137名について検討(回収率91.3%)。1)患者の年代別比較は60~70歳代で65.2%を占め,通院理由は「痛み(67.2%)」,「動きづらさ(26.3%)」,「病態の確認と予防のため(18.2%)」であった。さらに,これらが日常何らかの支障となると答えた割合は77.0%を占め,「生活動作(60.1%)」,「仕事(25.6%)」,「余暇(5.1%)」の順で高い割合を示した。2)理学療法を「受けたい」78.6%,その内訳は徒手療法や物理療法の希望が約半数を占め,姿勢や歩容等日常生活動作の改善や運動指導といった運動療法主体のものは,約20%と関心が低かった。3)身体のどこかに衰えを「感じている」87.6%,何らかの姿勢の変化を感じている患者が半数以上,4)63.2%が日常において健康を保つための働きかけを行っていた。
【考察】アンケート結果より,通院患者の多くが高齢者である当院において,過半数以上が疼痛を主訴としており,その2/3以上が日常何らかの支障を感じていた。しかし,具体的な日常生活障害を訴えるものは10例のみであり,仕事や余暇での制限を訴える割合も意外に少ない。つまり治療として生活動作の中での痛みの改善を重視する傾向にあり,「生活の快適さ」を求めていると示唆された。また理学療法を「受けたい」と希望する中でも,運動療法主体のものは少なく,現状において患者に期待される理学療法士の役割とは,疼痛コントロールの一手段でしかないと考えられる。自覚症状が落ち着けば姿勢の変化や歩容の改善等に関心が向きにくく,予防的な見地からは十分な理学療法とは言えず,このような状態のまま日常生活動作を続けることは障害を繰り返すと予測される。近年,病院での「事後の治療」から自己での健康管理といった「事前の治療(予防)」へと関心が向けられつつある。しかし約20%が理学療法を希望しないとあり,理学療法業務には「予防」が明記されていながら十分認知されていない現実が示唆された。理学療法士として携わる役割は幅広い。しかし,今回の結果から求められている業務は偏っており,今後の課題と考える。特に,身体にとって適切で効率のよい日常生活動作につながる指導も大切な業務であることを認識してもらうべく活動する事が重要と考える。

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© 2004 日本理学療法士協会
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