理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 397
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神経系理学療法
左半側視空間無視患者におけるヘッドマウントディスプレ-を用いた視空間認知評価の検討
*杉原 俊一田中 敏明村上 新治白銀 曉前田 佑輔泉 隆奈良 博之
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抄録
【目的】現在半側視空間無視(以下USN)患者に対する評価は主に2次元的な机上の検査と動的な3次元の生活場面での行動観察が中心である.しかし日常生活の問題に対し現在のUSN評価は必ずしも十分に反映していないという意見も多々ある。そこで本研究ではHMD(Head Mounted Display)技術の利用により2次元的評価の視覚呈示に多様性をもたせ、より個別的なUSN評価の可能性を見出すことを目的とした。
【方法】被験者は研究内容を理解し同意を得られ、CTスキャンによって右半球損傷が確認された臨床場面で左USNを有する脳血管障害患者8名で視力障害、痴呆を有するもの、左利きは対象外とした。医学的情報として診断名、病巣部位、発症からの期間.日常生活動作・訓練場面におけるUSN評価(10項目からなり各項目1点,全ての項目で無視が見られれば10点),机上検査としてBehavioral Inattention Test(BIT)項目から線分抹消試験、星印抹消試験の2項目を選択実施した.被験者は背もたれから背部が離れないよう埼座位又は車椅子座位を基本測定肢位とし,(1)通常机上検査,(2)DVカメラにより撮影された机上検査用紙を全ての周囲環境を除いてHMD(キャノン製GT270)の眼鏡状液晶ディスプレー一面に拡大したズーム・イン条件(ZI),(3)(2)の条件でDVカメラのレンズを0.75倍に変更し検査用紙を縮小したズーム・アウト条件(ZO)で検査を実施した.分析方法としては線分抹消試験では中央列の4本を除き紙面を左と右に2分割し,抹消した線分の抹消率を求め,また星印抹消試験においても検査用紙を6つの区分に分割し(左側左,左側正中,左側右,右側左,右側正中,右側右),各々印をつけた星の数を区分毎の抹消率として算出し空間性注意能力の指標とした.
【結果】線分抹消試験は通常条件で紙面左側抹消率94.4%,紙面右側抹消率100%.紙面が拡大するZI条件で紙面左側抹消率57.9%,紙面右側抹消率91.3%.紙面が縮小するZOで紙面左側抹消率76.9%,紙面右側抹消率90.5%であった.通常条件と比べZIで左側抹消率が低下するもZOで左側抹消率の低下の改善が見られ,各々の条件による違いを認めた(P<0.01).また星印抹消試験においても同様の傾向を示した。
【考察】本研究では頭部を動かしても視覚情報は変化しないことから,ある一定の枠組みを基準とした物体中心座標系における空間性注意を評価していると考えられる.ある一定の枠組みである「全体」から周囲の環境が除かれた「部分」となるZIでは注意の左方向の能動的な移動が困難となり,USN患者は「全体」から「部分」の注意を切り替えにおいて空間性注意が右方向に偏るという傾向が視覚環境を限定することにより明らかとなった.このことから机上の通常USN評価に比べ多様かつ詳細な検討と考えられ、視覚呈示を変化させるHMD技術の利用にる臨床応用の可能性が示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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