理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 396
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神経系理学療法
急性期脳卒中における半側空間無視の出現頻度と消失時期の検討
*山道 和美河島 英夫三山 奈穂子井元 香関原 康司河波 恭弘米原 敏郎藤岡 正導
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抄録
【目的】半側空間無視(以下USN)は、脳卒中のリハビリテーションにおいて大きな阻害因子となる。しかし、急性期脳卒中におけるUSNの出現頻度や自然経過に関する報告は少ない。そこで今回、急性期脳卒中におけるUSNの出現頻度、消失時期、それらに影響する背景因子の調査を行なったので報告する。
【対象と方法】平成15年5月から9月まで当院に入院した脳卒中症例で、理学療法(以下PT)依頼があったのは236例であった。この内、入院時所見又は理学療法士による初期評価時USNと診断された28例から意識障害等により検査困難であった7例を除く21例(脳梗塞14例、脳出血7例、男性12名、女性9名、平均年齢72.8±10.8歳)を対象とした。判定法は、ベッドサイドで行なうスクリーニングテスト、身体失認・左右失認の有無、背臥位姿勢、無視側からの声かけ、無視側の物品認知、座位保持姿勢、端座位保持の自立、Pusher様症状の有無、線分二等分試験、抹消試験を用いた。評価は、発症1週間毎と退院時に行なった。背景因子として原因疾患、麻痺側、初期評価時Japan Coma Scale、PT実施日数、座位開始までの日数、在院日数を調査し、USNの自然経過との相関を調べた。なお統計学的分析にはχ2検定及びMann-WhitneyのU検定を用いた。
【結果】USN出現率は11.9%(21例)であったが、右USN2例、左USN19例であり明かな左右差を認めた。全体として当院から転院するまでに完全に消失した症例は8例(38.1%)、残存した症例は13例(61.9%)であった。消失時期は、発症から1週目までに4例(50%)、2週目までには全例が消失していた。線分二等分試験が実施可能だった15例では1週目までに9例、2週目までに11例が消失、4例は残存していた。抹消試験が実施可能だった15例では1週目までに7例、2週目までに9例が消失し、6例は残存していた。また、座位開始までの日数が短いほど有意に消失例が多かった(p=0.039)。その他、USN消失例と残存例間で原因疾患、PT実施期間、在院日数等に有意差は認められなかった。
【考察】USNの出現頻度に関する報告は、40%前後であるとするものが多い。豊田らは経過中約30%の症例において平均3.4週でテスト上、ADL上のUSN消失が認められたと報告している。また、USNによる急性期リハビリテーションの阻害因子は覚醒水準の低下と注意障害により増幅されるため、網本らはその対応策として可及的早期の車椅子座位保持の重要性を推奨している。今回我々の調査でも、初期にUSNを認めた症例の約4割は2週間で完全に消失しており、早期座位開始がUSN消失に影響している結果が得られた。USNの出現頻度や消失時期の報告には一定の見解がないため、今後も引き続き調査を行い検討していきたい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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