理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 409
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神経系理学療法
脳性麻痺の科学的トレーニングに関する基礎的研究(第1報)
*石塚 和重
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抄録
【目的】従来、脳性麻痺のスポーツは過激な運動によって異常筋緊張や伸張反射を誘発し、拘縮・変形を助長するのでよくないといわれてきた。脳性麻痺のリハビリテーション場面においても、筋の異常な協調作用という問題が脳性麻痺の問題であり、筋の機能を発揮しようとする際に、数少ない異常な運動パターンでしかそれを発揮することができないところに問題が大きいとしている。本研究では脳性麻痺の科学的トレーニングの可能性について検討する。今回は頚椎前方固定術後、競技生活に復活したアテトーゼ型脳性麻痺の陸上競技選手について、競技復帰を目的とする中で、選手の体力特性の把握の重要性とトレーニング結果について述べる。
【対象と方法】 対象は100m、200mの陸上競技選手でフェスピック大会100m3位、世界選手権100m4位の選手だったが、陸上競技中の度重なる転倒で頸髄損傷になり、2002年8月14日に頸部前方除圧固定術施行した。2002年12月26日に第1回目の検査をした。以後3ヶ月ごとに定期的に以下の項目について測定した。1.形態・身体組成(身長・体重・体脂肪率)2.MRI画像(大腿部筋面積・大腰筋面積など)3.等速性筋力(膝関節・股関節の伸展・屈曲の筋力)4.動作速度(膝振り上げ速度・膝振り下ろし速度)5.無酸素性能力:ミドルパワー(30秒間の自転車エルゴメーター)の5項目である。発表に際し、本人の承諾を得ている。検査はスポーツホトニクス研究所で実施した。
【結果】 初回測定では高い体脂肪率(17.14%)と膝屈筋力(膝屈/伸比50.2%・右50.7%ー等速性筋力180deg/sec)の弱さを確認する。有酸素的運動と膝屈曲力の強化及び坂道ダッシュを取り入れ、ハムストリングスを意識したトレーニングを開始した。6ヶ月後の3回目の検査にて体脂肪率改善(13.44%)、膝屈伸比改善(右69.4%左54.2%ー等速性筋力180deg/sec)他ミドルパワー(体重割値)改善(6.65→7.73)、動作速度改善(膝振り上げ速度改善:左2.72→2.98 m/sec、右3.08→2.71m/sec、振り下ろし:左3.49→4.24m/sec,右3.28→3.99m/sec)が認められる。大腰筋面積にも変化がみられ、左15.65→17.02cm2、右15.76→17.05cm2と増大している。記録も200m34秒8(2003年2月)→30秒98(2003年9月)、400m80秒5(2003年2月)→74秒78(2003年9月)と向上し、2003年ジャパンパラリンピックのC6クラスで2種目とも優勝し、みごとに復活をとげた。
【結語】 障害者スポーツを科学する試みは脊髄損傷者の車椅子競技ではすすめられているが、脳性麻痺ではまだこれからの領域であろう。今回の研究結果から、科学的データに基づいた脳性麻痺の科学的トレーニングは障害の程度においては可能であると考える。
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© 2004 日本理学療法士協会
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