理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 545
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神経系理学療法
足底腱膜内側部の刺激で誘発される運動姿勢の検討
*黒橋 佳洋島 欽也羽山 和生
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抄録

【目的】これまで脳性運動障害者に対し、足底腱膜の異なった部位へ刺激することにより、それぞれ特有な運動姿勢が誘発されることを経験していた。その一つとして外側部の踵骨付着部に対する圧迫刺激で引き起こされた運動姿勢については第35回本学会において報告した。今回は、踵骨付着部内側部への刺激で誘発される運動姿勢を運動学的に検討し、本部位への刺激後の動作で変化がみられた小経験例も併せて報告する。
【対象と方法】対象は54歳の女性で、アテトーゼと痙直の混合型CPである。身体的特徴として頸部の左側屈位(幼児期に右胸鎖乳突筋切離術)と右股関節の伸展・内旋制限(変形性股関節症の疼痛による)がある。対象者を背臥位・腹臥位・側臥位の3体位につき安静位におく。術者は対象者の一側足関節を内反背屈位に保持する。足底腱膜内側部の踵骨隆起付着部に、指が足底面と約45度の角度を保持した状態で、一側母指約1.77cm2辺り2.0~2.5kg程度の圧迫刺激を十数秒から数十秒間加える。側臥位では下側下肢の足底へ刺激を行った。その時の状態をデジタルビデオカメラに録画し、運動学的に検討した。次に、背臥位で常同的な頸部の後屈と右側への頸部と体幹の回旋を呈する痙直アテトーゼ型CPの8歳男児と、背臥位からの寝返りで頸部と体幹の伸展運動が乏しい痙直アテトーゼ型CPの25歳男性の2症例の刺激前後の姿勢・動作に対してもビデオ画像を用いて検討した。なお、対象者と症例、また保護者には本研究の説明を行い同意を得た。
【結果】対象者の背臥位では刺激中、頸部・体幹部は伸展し刺激側への回旋、刺激側の四肢は肩関節外転・外旋、肘関節軽度屈曲、前腕回外、手関節背屈、手指伸展、股関節屈曲・外転・外旋、膝関節屈曲であった。非刺激側では、肩関節屈曲・内旋、肘関節伸展、前腕回内、手関節背屈、手指軽度屈曲、股関節屈曲・内転・内旋、膝関節伸展、足関節背屈外反であった。腹臥位では刺激中、刺激・非刺激側ともに股関節伸展、側臥位では刺激中、非刺激側の股関節外転が背臥位と異なった状態像を示した。最初の症例は左側足底への刺激で全身の左側への回旋運動が起き、刺激後は頸部の左右への回旋がみられた。次の症例では刺激後の寝返り動作の大半で全身の伸展運動がみられた。
【考察】今回の方法では刺激中、刺激側へ各関節が回旋する運動がもたらされた。頸部・体幹部では伸展と回旋、四肢は刺激側の外転・外旋、非刺激側の内転・内旋が主として発現した。しかし股関節の運動が体位別で異なっていたが、股関節の状態に左右される程ではなかったため、姿勢に影響される何らかの機序も考えられた。また以前報告した外側部への刺激では屈曲・内転方向、今回の内側部への刺激では伸展や外転方向へ運動が発現したことから、足底腱膜の感覚入力の局在性が内側部と外側部で異なることが示唆できた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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