理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 554
会議情報

神経系理学療法
脳損傷に対する単純反応時間の有用性
*高橋 佳恵高倉 保幸武田 賢二大住 崇之河村 つや子小牧 隼人藪崎 純山下 美歌子井上 江里奈小関 要作加藤 裕子草野 修輔山本 満大井 直往陶山 哲夫
著者情報
キーワード: 脳損傷, 反応時間, 理学療法
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
 脳損傷例に対する理学療法では、運動指示や外部環境に対する変化に迅速に対応できない症例を経験する。このような症例では、個々の刺激に対する反応性が、麻痺や関節可動域制限と同様に基本動作や歩行能力を障害する因子のひとつになると考えられるが、臨床応用が可能な簡便な評価手段は確立されていない。今回我々は、脳損傷例に対する理学療法の前後で単純反応時間の測定を行い、単純反応時間の臨床的意義について検討を加えたので報告をする。
【方法】
 脳損傷の診断で当院に入院し、理学療法を行った24例を対象とした。性別は男性17例、女性7例。年齢は68.3±10.3(平均±標準偏差)歳。疾患は脳血管疾患21例(陳旧例4例)、頭部外傷2例、脳腫瘍1例であった。対象者にヘッドホンを装着、非麻痺側手でスイッチを把持し、スイッチを押したまま待機、ヘッドホンから音が聞こえたら出来るだけ素早くスイッチを離すように説明。ランダムに発信される音刺激からスイッチを離すまでの時間を計測して単純反応時間とした。測定は理学療法実施前後に各10回実施した。なお、計測前に数回の練習を実施し、方法を理解できていることを確認した。統計学的検討にはT検定を用い、有意水準は5%とした。
【結果】
 理学療法実施前の単純反応時間は0.254±0.179秒、理学療法実施後の単純反応時間は0.249±0.249秒であった。理学療法前後の単純反応時間をみると、24例中11例に有意差がみられ、11例中7例では理学療法実施後に短縮を示し、4例では遅延を示した。
【考察】
 反応時間に影響を与える因子としては、注意の覚度、認知能力、神経・シナプス伝達速度、末梢の筋・関節の能力が考えられる。理学療法では、上肢を用いた課題練習や認知課題は少ないことから、認知能力、神経・シナプス伝達速度、末梢の筋・関節に対する影響は考えにくく、理学療法後に短縮を示した症例では注意の覚度の向上、遅延を示した症例では疲労による注意の覚度の低下が考えられる。これらのことから、単純反応時間の測定は注意の覚度を評価する簡便な方法であることが示唆された。
【まとめ】
 脳損傷例24例に対して、理学療法前後で単純反応時間測定を実施した。24例中11例に理学療法前後の単純反応時間に有意差がみられ、単純反応時間の測定は注意の覚度を評価する簡便な方法であることが示唆された。
著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top