抄録
【はじめに】体性感覚誘発電位(以下SEPとする)は体性感覚路の障害を客観的に把握でき、脳卒中患者の感覚機能評価として有用である。リハビリテーション医学におけるSEPは、体性感覚障害を意識や知能、さらには認知障害などにかかわりなく評価でき予後推定の補助手段として有用である。しかし、従来の研究では初期成分に着目しているものが多く、N2成分以降の中期成分に関しての報告は少ない。またその意義においても覚醒や判別準備動態を反映するなど一致を見るには至らないが、高次感覚情報処理過程を表した電位との見解が多い。そこで今回我々は脳卒中片麻痺患者におけるSEPの患側及び健側の中期成分に着目し運動感覚と触覚の弁別感覚の障害程度と比較を行った。
【対象・方法】対象は平成14年1月以降に発症した片麻痺患者6例(男性:4例、女性:2例、平均年齢:70.2歳)である。感覚障害の程度は母趾の運動覚を調べ3群(1群:正常2例、2群:軽度~中等度鈍麻1例、3群:重度鈍麻~脱失3例)に分類した。また、触覚の弁別感覚評価として3種類の異なるサンドペーパーにても検査を行った。SEPの導出部位は国際10-20法に基づく、Cz、Cz’(Czの2cm後方)の2ヶ所とし、電気刺激を脛骨神経に足関節内果部で与え、500回の加算平均を行った。導出されたSEP成分は各ピークの極性に出現順の番号を付しP1、N2、P2、N3と表記、頂点潜時、頂点間振幅を測定、また頂点潜時は身長にて補正し正規化した。
【結果・考察】感覚評価は1群において弁別感覚の解離が認められた。中期成分(N2-P2)の潜時は患側1群(35.5,39.8)、2群(38.1)の3例及び3群の1例(39.8)で遅延し、3群の2例ではflat patternであった。健側は1群(37.3,41.1)、2群(37.8)で遅延していた。振幅は患側1群(3.82,9.07)、2群(8.80)、3群(4.49)、健側は全例にばらつきがあり一定した傾向は認めなかった。感覚評価では今回1群の2例では運動覚と弁別感覚の解離が認められ、これらの中期成分において潜時の遅延、振幅の異常が見られた。今回の結果では感覚解離例においては電位の異常が出現する可能性があると考えられる。また振幅においては患者の注意集中等の精神状態により影響する場合があり今回の症例数で定性性を捉えることはできなかった。健側中期成分とADLの関係で、3群では健側SEPの潜時が最も良い1例でADLは屋内自立レベル、他2例では患側、健側において潜時の遅延、振幅の低下が認められ、ADL中等度~重度介助レベルであった。SEPと神経症状の検討では運動、感覚障害が重度な程N1-N3全成分の消失を来たすとされ、ADLレベルを考慮した際、健側初期及び中期成分が良好で対側脳へ影響が少ない症例でADLレベルが高くなると示唆される。