理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 677
会議情報

神経系理学療法
脳血管障害後片麻痺に対するバランス練習が介入終了2週後の機能変化に与える影響
*内山 靖臼田 滋新谷 和文吉田 剛後閑 浩之鶴埜 益巳落合 久幸鶴見 麻里子樽石 麻紀伊東 有紀子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】回復過程にある脳血管障害後片麻痺(以下:片麻痺)に対する理学療法効果を検証するには、介入後の変化を対照群と比較するとともに、介入終了後の機能変化を経時的に検証する必要がある。本研究では、多施設間無作為化比較対照試験によるバランス介入が、介入終了後の機能変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】協力の得られた6施設に入院中の片麻痺患者のうち、上肢の支持を含めて1分以上立位保持が可能な例を対象とした。なお、介入内容を十分に理解できない高度の痴呆、純粋なパーキンソニズムおよび小脳性運動失調を呈する者は対象から除外した。担当の理学療法士および患者に十分な説明を行い、文書で同意の得られた場合のみ研究に参加した。介入か対照かは各施設のコーディネータが封筒法またはカルテ番号により無作為に割り付け、担当理学療法士に選択権はなかった。
 介入は、通常の理学療法に加えて1日1回15分のバランス練習を2週間実施した。介入内容は、不安定な足底面(フォームラバー)上での立位で、姿勢保持、リーチ、外乱応答、随意運動を行った。対照群は、足底を接地した座位で、姿勢保持、リーチ、外乱応答、随意運動を同じ期間実施した。
 評価は他施設から派遣された理学療法士が行い、評価者には盲検を施した。評価項目は、床面上およびフォームラバー上での開閉眼時の立位保持時間、TUG(3m最速)、FAC(歩行自立度)、10m最速歩行時間(歩行速度、重複歩距離、ケイデンスを算出)、FMS(機能的動作尺度)とした。また、麻痺側、発症からの期間、病巣、合併症、補装具の使用状況および関節可動域、麻痺機能、体性感覚、視空間認知を調査した。
 介入前の基本属性に対してカイ二乗、t検定を行い、介入終了2週後の機能変化について群ごとの平均値を対応のあるt検定で比較した。
【結果および考察】介入群は55名(平均68.5歳、右麻痺23例・左麻痺32例)、対照群は38名(平均68.3歳、右麻痺15例・左麻痺23例)であった。介入前の両群間では全ての属性および機能評価で有意差を認めなかった。
 介入群では、介入終了2週後において、開閉眼時のフォームラバー上での立位保持時間、TUG、歩行速度、重複歩距離、FMSに有意な改善が認められた。一方、対照群では、閉眼時フォームラバー上の立位保持時間、歩行率に改善がみられた(p<0.05)。なお、開眼時フォームラバー上での立位保持時間は両群間でも有意な差を認めた。
【結論】本結果から、回復過程にある片麻痺に対する1日15分の2週間にわたるバランス介入は、介入終了2週後の機能変化においても対照群と比較して有意に優れていることが明らかとなった。
著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top