理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 704
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神経系理学療法
リハビリテーション目標に対する達成感
*新田 春子白濱 勲二森山 英樹前島 洋吉村 理
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抄録

【目的】リハビリテーション目標について,目標に対する患者の達成感に着目し,患者の感情と治療者の認識を調査した.
【方法】H県のJ病院に外来通院する非痴呆の脳血管障害患者23名(男性13名,女性10名),平均年齢67.2±7.5歳と担当理学療法士(PT)を対象に,リハビリテーションに関する質問紙調査を行った.患者には1)患者自身の目標,2)PTが設定した目標,3)1)に対する達成感,4)1)に向けた治療の遂行程度,5)現在の治療項目に対する達成感を質問し,PTには1),2)の回答と3)―5)の患者の感情の推測に加え,現在の治療項目の回答を求めた.なお,3)―5)はVisual Analog Scale(VAS)で測定した.患者が回答した1)が治療に反映されているか否かで反映群と非反映群に分けた.統計学的解析は,患者内および患者―PT間のVAS得点の相互関係にスピアマンの順位相関係数の検定,差の検定にMann-Whitney U-testを行った.
【結果】PTが設定した目標を回答した患者はわずか2名だった.反映群は10名,非反映群は13名だった.反映群では,患者自身の目標に対する達成感の患者の回答とPTの推測に相関関係がみられたものの(r=0.689,P=0.028),同時に有意差がみられた(U=21.0,z=―2.194,P=0.029,患者34.7±24.3点,PT58.1±16.8点).患者のVAS得点に関して,非反映群は反映群に比して現在の治療項目に対する達成感が有意に高く(反映群38.4±19.0点,非反映群63.1±12.9点,U=17.0,z=―2.979,P=0.002),現在の治療項目に対する達成感と患者自身の目標に対する達成感に相関関係がみられた(r=0.609,P=0.027).
【考察】本研究結果から,患者の目標を治療に反映しても治療者が患者の達成感を把握することは困難であり,反映しない方が治療項目に対する患者の達成感が高く,それが患者自身の目標に対する達成感につながることがわかった.自身が抱く目標に対する患者の達成感を高めるには,治療項目に対する達成感を高めることが重要で,そのためには治療者の客観的判断による的確な目標に向けて治療を遂行することが有効と考えられる.本来リハビリテーション目標は,患者の自己決定権を尊重し,それを治療者の専門性と両立させ,患者と治療者が共同で設定するものである.また治療は,患者と治療者の共通の目標に向けて両者が共同で進めるものである.このようなインフォームド・コオペレーションに則った本来の目標設定と治療の遂行が実現すれば,目標に対する患者の達成感と治療者の認識との乖離を防ぐことができ,かつ的確な治療内容のもとで,目標に対する患者の達成感を効果的に高めることができると考えられる.

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© 2004 日本理学療法士協会
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