抄録
【はじめに】スポーツ外傷・障害(以下傷害)における競技復帰を目指したリハビリテーションや、スポーツ傷害の予防を考える上で傷害の特性を知ることは重要である。しかし、空手道における傷害調査の報告は少ない。今回、高等学校空手道部員を対象として、傷害状況と傷害に影響する要因を調査し若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】対象は茨城県下の高等学校空手道部員で平成15年7月21日に開催されたリーダー講習会の参加者16校110名(男性75名、女性35名)とした。事前にアンケートに対する説明を行ない、同意を得た。調査項目として(1)基礎データ(年齢、性別、身長、体重、1日の練習時間、1ヶ月間の休日数、経験年数)(2)受傷状況(3)診断名(4)パフォーマンスへの影響(5)傷害に対する自己管理などを挙げた。また、傷害に影響する要因を判別するため、目的変数を傷害の有無、説明変数を基礎データ各項目とした判別分析を行った。
【結果】傷害あり群(A群)が74名(男性48名、女性26名)、傷害なし群(B群)が36名(男性27名、女性9名)であった。A群の受傷状況は105件(一人あたり1~4件、平均1.4±0.6件)で、練習中47%、練習試合18%、公式試合9%であった。傷害部位は、足部21%、手部、腰部ともに11%、下腿部9%、顔面8%、その他13%であった。診断名は、打撲18%、骨折17%、捻挫10%、腰痛症・椎間板ヘルニア9%、その他20%であった。受傷機転は突きや蹴りなどの攻撃時37%、防御時14%、不明13%、その他10%であった。パフォーマンスへの影響では、影響のある傷害は44%であった。内訳は痛み33%、パフォーマンスの低下8%、可動域制限2%、再発しやすい1%であった。痛みの中で10名が「逆突き」という特定の動作で腰部に痛みを訴えており、全員が腰痛症・椎間板ヘルニアであったという興味深い結果が得られた。傷害に対してストレッチングやアイシング、テーピングなど自己管理を行なっている者は33%であった。判別分析では判別係数で年齢0.7、1日の練習時間0.43、性別0.37、経験年数0.13、身長0.12と正の相関、1ヶ月間の休日数-0.15、体重-0.09と負の相関が認められた。判別的中率は71.3%であった。
【考察】高等学校特有の練習量の多い部活動では、年齢が高く、経験や練習量が多いほど傷害の発生頻度が高くなるという結果が得られた。高等学校の空手道の練習ではパフォーマンスの向上にともない、受傷するリスクも高くなっていると考える。また、受傷の多数が攻撃時に認められ、打撲、骨折、捻挫という外傷であった。突きや蹴り技に対して傷害を予防する指導や対策が必要であると考える。受傷後の傷害に対する自己管理を行なっている者が約3割という結果から、受傷後のRICEや自己管理の重要性を啓発していく事が課題である。パフォーマンスへの影響では、痛みによる影響が多い。痛みの原因やフォーム、コンディショニング方法など今後検討していく必要がある。