理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 90
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骨・関節系理学療法
ハムストリングに対する新しいエクササイズの考案
*ニシワキ ガストン浦辺 幸夫田中 浩介
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抄録

【目的】
 我々は非接触型膝前十字靱帯(ACL)損傷の予防について研究を進めてきた。ACL損傷は女性に多いが、損傷が多く発生しているジャンプからの着地動作を分析すると、女性は男性と比べて大腿四頭筋活動に対するハムストリング活動が明らかに低いことが示されている。特に着地初期の比較的膝関節が伸展位におかれる位置でこの傾向が著明である。膝関節伸展位はACL損傷が発生しやすい位置でもある。そこで我々は、着地動作でハムストリングの活動をさらに高めるような運動形態を見出す必要があると考えた。今回、下肢関節同時運動で大腿と下腿に負荷をかける方法でどうすればハムストリングの活動が増えるか筋電図を用いて測定を行った。
【方法】
 対象は膝関節に特に既往のない学生6名(男性3名、女性3名)とした。筋電図は利き脚の半腱様筋(ST)、大腿二頭筋(BF)で記録した。今回考案したエクササイズは背臥位で大腿遠位部と下腿遠位部に牽引フックを固定する治具をつけた幅70mmのカフを装着させた。大腿カフには股関節屈曲方向に牽引するロープをかけオーバーヘッドフレームに固定した滑車を介して重錘負荷を加えた。下腿カフには膝関節伸展方向に牽引するロープを同様にかける。大腿カフと下腿カフに同時に2kg、4kg、6kgの重錘負荷を加え、膝関節屈曲15°、30°、45°を保つように等尺性収縮を行わせた。ハムストリングの活動量を比較するために、対象に50kgのバーベル負荷を与えたスクワット動作で膝関節屈曲15°、30°、45°の等尺性収縮を行わせた。筋収縮は2秒間行わせ、筋電図は生波形をRMSに変換し、そのうちの1秒間の積分値を用いた。筋活動量はそれぞれの筋の最大収縮時の活動量に対する割合(%MVC)とした。
【結果】
 6kg重錘負荷でSTは約12%から13%、BFは約10%から14%MVCであり、スクワットでSTは約10%から12%、BFは約13%から16%MVCであった。STの筋活動量は6kgの重錘負荷を加えたとき、全ての角度でスクワットよりも高くなった。BFの筋活動量はどの負荷重量でもスクワットよりも低かったが、負荷が増加するにつれて活動量が増す傾向がみられた。
【考察】
 今回、下肢関節同時運動でハムストリングの活動量を増加させるためにエクササイズを考案した。50kgのバーベル負荷を与えたスクワットと考案したエクササイズのいずれにおいても、ST、BFの%MVCはともに20%未満であった。我々の先行研究で、ジャンプ着地動作時のハムストリングは膝関節屈曲15°から45°の範囲で約45%MVCを示していたことから、今後、さらに負荷重量を変化させてより高い筋活動量を得るにはどうしたらよいか考えていきたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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