抄録
【目的】近年先進国では慢性疾患のアウトカムに罹患率や死亡率などの伝統的アウトカムのみでなく、患者立脚型アウトカムと呼ばれる主観的な指標の重要性が認識されている。また、慢性疾患は予防にも重点が置かれてきており、身体活動量の有用性も認識されている。変形性股関節症(osteoarthritis:OA)は慢性疾患であり高齢者に罹患率が高く、罹患期間が長い。手術を行ってもその後の機能回復は限定的なことも多く、関節に障害を抱えたまま生活していかねばならない。OAは長期間の高負荷が症状や病期の進行に関与しているため、身体活動量を制限する傾向にあるが、身体活動量が障害構造の中でどのような位置づけにあるのかは不明である。本研究の目的は変形性股関節症患者において股関節機能・身体活動量・健康関連QOLの関係を探ることである。
【方法】対象者はOAの診断で当院に定期受診し、本研究に同意した女性患者25名(49.1±10.8歳)であった。測定項目はMOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36)、Harris Hip Score(HHS)、万歩計(SUZUKEN社)で測定した一日平均歩数(Physical Activity:PA)とした。SF-36は8つの下位項目から計算される身体的健康を表すサマリースコアー(PCS)の偏差得点を用いた(福原俊一、他.SF-36日本語版マニュアルver.1.2)。統計解析は変数間の分析にPearson相関係数、重回帰分析、パス解析を使用し、危険率を5%とした。
【結果】測定項目の平均値はHHSが79.4±11.8点、PAが7,392±2,511歩、PCSが43.0±8.0であった。これら3変数間には中等度の相関関係を認めた(r=.471~.617)。PCSを従属変数、HHS・PA・年齢を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)では、PCSに有意に寄与している変数はHHSのみであった(R2=.364)。パス解析ではHHSがPAとPCSに対して交絡変数として作用し、PAからPCSへ有意な直接効果がないモデルが採択された(χ2=.664、p=.415)。
【考察】PCSの女性国民基準値は50.2であり、25%タイルが46.0である。本研究の対象者の平均値は25%タイルを下回っており、身体に関し低いQOLを有していた。健常人においてQOLに影響を与える要因として体力、活動習慣などが報告されている。OA患者においても健常人と同様に身体活動量がQOLに影響していると考えられたが、身体活動量が股関節機能に影響を受けているためであった。つまりSF-36におけるPCSの改善には股関節機能の改善が重要であることが示唆された。一方で寄与率であるR2が.364と低くPCSには他の要因も関与している可能性が大きい。本研究は十分な検出力を有したサンプルサイズでないため明確にできないので、今後対象者を増やすとともに、健康関連QOLに影響を与える変数の解明を行っていきたい。