理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 174
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骨・関節系理学療法
下腿切断における義足歩行の筋電図的検討
ソケット内に収納される筋を含めた検討
*笘野 稔永冨 史子
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キーワード: 切断, 義足, 筋電図
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抄録

【はじめに】
 切断術における筋肉の処理は,切断肢の条件に応じて種々の方法が適用される。筋固定術は切断された筋の生理的な緊張を保つ,上位関節の運動に関与できる,などの目的で行われる。一方,機械構造の進歩した義足も,継手制御は上位関節の運動を利用するのが基本である。よって筋固定術後には,歩行時の筋活動は切断前とは異なるパターンとなることも考えられる。
 しかし義足歩行中の筋活動,特にソケット内に収納される筋群についての報告はみられない。これは,通常の表面電極ではソケットの圧迫によるアーチファクトが混入して筋電図的検討が困難なこともその一因である。今回我々はソケット内に収納される筋にも使用できる表面電極を作成し下腿切断者の歩行中の筋電図を記録した。
 本研究の目的は,下腿切断者の義足歩行中の下肢筋活動パターンと活動量とについて検討することである。
【対象と方法】
 対象者は,下腿切断者4名(男2名,女2名,16~53歳.切断術からの期間は18~32週)である.全例とも義足歩行自立し,筋力および関節可動域は問題なかった.使用していた義足はPTS式下腿義足1例,TSB式下腿義足3例であった.対象者には事前に研究目的を説明し同意を得た.
 筋電計はNORAXON社製Myosistem1200を使用し,サンプリング周波数1000Hzで筋電図を導出した.
 導出筋は,切断側の大腿二頭筋長頭,半膜様筋,腓腹筋であり,表面電極を十分な皮膚処理の後,貼付した.ソケット内となる腓腹筋に対しては貼付部への圧迫による影響が避けられるように加工した電極を残存している筋腹中央部に貼付した.貼付後ソケットを装着して運動を試行し,ソケットの接触によるアーチファクトの混入がないことを確認した.各筋の活動量は最大随意収縮(MVC)時の筋電図積分値にて正規化した.
 歩行は,10mの屋内平地歩行とし,開始時および終了時を除いた5m分の筋電波形を用いて検討を行った.歩行周期は筋電図に同期させて記録したフットスイッチからの信号をもとに判断した.
【結果と考察】
 腓腹筋は4例とも立脚期を通じた活動を認め,遊脚期に移行する直前に波形が急激に減少することが共通して認められた.また,健常者の歩行でPush offの際にみられる立脚相末期の急激な活動量の増加は2例で認められた.
 大腿二頭筋長頭,半膜様筋の歩行時の筋活動と腓腹筋の筋活動を比較したが,共通する特徴は認められなかった.
 切断術により骨に固定された腓腹筋は膝関節屈曲の作用を持つと考えられているが,今回の研究では腓腹筋がこういった作用を再獲得していることを示唆する結果は得られず,切断前の歩行時の筋活動パターンに準じてソケット内で活動していることがわかった.

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© 2004 日本理学療法士協会
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