理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 248
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骨・関節系理学療法
腰部脊柱管狭窄症例の動的姿勢の検討
*石井 美和子石井 慎一郎赤木 家康
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抄録

【はじめに】腰部脊柱管狭窄症の臨床所見として、上体を起立した姿勢で症状が増悪するという特徴が挙げられる。臨床場面において、本疾患々者は動作時に症状が増悪することが多く観察されることから、本疾患々者の動作時の姿勢が症状誘発の一因子であると考えられる。そこで、今回は骨盤の動きに着目して腰部脊柱管狭窄症例の歩行時の動的姿勢について検討した。
【方法】対象は腰部脊柱管狭窄症例7例(脊椎症性3例、変性すべり性4例、以下狭窄群、平均69.3歳)、腰部に既往のない健常者3例(以下健常群、平均57.4歳)とした。両側の肩峰・上前腸骨棘・上後腸骨棘・大転子に標点を貼付し、自由歩行を側方よりデジタルビデオにて撮影した。上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線と水平線の成す角度を骨盤傾斜角度、上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線の中点と肩峰を結び、その線と鉛直線の成す角度を体幹傾斜角度と定義して、ビデオ画像から1歩行周期中のそれらの角度をScion Imageを用いて計測し、健常群と狭窄群でそれらのデータを比較検討した。
【結果】1.骨盤傾斜角度
健常群の歩行中の骨盤傾斜角度は踵接地時平均8.7度前傾で、立脚中期にかけて前傾角度の減少を認めた。立脚後期から再び前傾角度が増加し、対側踵接地の時点で平均9.3度前傾していた。遊脚期は初期から中期にかけて前傾角度が減少、中期から後期には増加傾向を示した。狭窄群の骨盤傾斜角度も健常群と同様の運動方向に変化を示したが、踵接地時の骨盤前傾角度は平均12.1度、立脚後期の対側踵接地時平均11.0度と健常群より高値の前傾角度を示した。また6例で踵接地後立脚中期にかけて骨盤前傾角度の増加を認めた。
2.体幹傾斜角度
健常群では踵接地時平均5.2度の体幹後傾を認めた。その後立脚中期にかけて後傾が減少し立脚後期から遊脚期は同程度の軽度後傾角度を示した。狭窄群では体幹後傾角度は踵接地時平均8.3度で、踵接地から立脚中期にかけて5例で後傾角度の増加が認められた。また4例で立脚後期の対側踵接地時に体幹の後傾角度の増加を認めた。
【考察】結果より、健常群と狭窄群で歩行中の骨盤および体幹の動きが異なることが明らかとなった。立脚初期から中期に狭窄群では骨盤は前傾し、体幹は後傾が強まる傾向がみられた。これは骨盤が前傾位のまま上体に対して前方へ変位している状態を示している。また、立脚後期の対側踵接地時に骨盤前傾と体幹後傾が強まる傾向にあった。これらの体幹と骨盤の動きによって腰椎は伸展を強いられることになると考える。したがって狭窄群の歩行時の動的姿勢は症状を誘発する因子を含んでいると考えられ、歩行時の骨盤の動きをコントロールする必要性が示唆される。今後、歩行中の動的姿勢を三次元的に分析するとともに、さらに他の動作における動的姿勢について検討を進めたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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