抄録
【はじめに】変形性膝関節症(以下膝OA)は、中高齢者の関節疾患のなかでも最も発生頻度の高い疾患である。近年の疫学調査で肥満が膝OAの発症や危険因子であることが明らかとなり、膝OA患者(特に肥満者)に対する減量は、その症状の軽減や進行防止に役立つことが期待されている。膝OA進行例には、人工膝関節置換術(以下TKA)施行されることが多く、日常生活動作の能力低下を改善させている。本研究の目的は、アンケート調査からTKA施行した患者の運動実施など現在の生活状況を把握し、肥満と膝OAによる関連を検討していくことである。
【対象と方法】膝OAの治療のために入院し、平成13年4月から平成15年5月までにTKA施行した患者55名を対象とした。
方法は郵送によるアンケート調査を行い、年齢・身長・体重・運動実施状況などを調査した。なお、BMI25kg/m2未満を非肥満群、BMI25kg/m2以上を肥満群として比較検討した。
【結果】アンケートの回収率は70.9%(39名)で、その中でも重篤な合併症のない34名の結果について分析した。その内訳は、男性8名、女性24名(平均年齢74.4±8.3歳、平均身長151.9±6.5cm、平均体重59.1±7.9kg)であり、術前のBMIは26.4±2.9kg/ m2、現在のBMIは25.7±2.4kg/ m2、片膝手術18名、両膝手術16名(同時膝手術1名)であった。非肥満群は10名で29.4%、肥満群は19名で55.9%、身長または体重の記入漏れのため分類不可の者が5名で14.7%であった。非肥満群では運動を実施していない者が10%、残り90%すべての者が週3回以上運動を実施していたが、肥満群では運動を実施していない者が26.3%、週3回以上の運動を実施していた者が52.6%であった。さらに、肥満群のみで運動頻度を週3回未満と週3回以上の者に分けると、BMIが週3回未満の者28.3kg/ m2、週3回以上の者25.9 kg/ m2で両者の間に有意差を認めた。(p<0.05)
【考察】今回のアンケート回収率は、70.9%と高く有効であった。BMIを術前と現在で比較すると、現在のBMIの方が減少しているが、現在のBMI25.7±2.4kg/ m2で肥満を示している。非肥満群では運動頻度は良好であったが、肥満群では非肥満群に比べて運動頻度は低かった。膝OAによってTKAを施行した患者では、運動が肥満を抑制する要因として重要であることを本調査は示唆した。ただし、肥満群においても運動頻度は良好な患者もおり、運動以外の要因が影響していると考えられ、栄養指導などの重要性を示唆する結果と思われた。