抄録
【はじめに】
われわれ理学療法士が経験する腰痛は,局所に何らかのメカニカルストレスがかかっており,そのメカニカルストレスが疼痛出現に関与していることが多く,理学療法においてもいかに局所へのメカニカルストレスを減少させることができるかが,機能改善のカギを握っていると考えられる。
そこで今回われわれは,慢性腰痛(伸展疼痛型)患者の伸展動作時にかかるメカニカルストレスを検証したところ若干の知見を得たので報告する。
【対象】
長年腰痛(伸展疼痛型)の自覚症状のある男女9例(男性5例,女性4例),年齢17-32歳,
【方法】
自動体幹伸展運動を任意のスピードで痛みの出現する直前まで行わせ,側方よりデジタルビデオにて撮影し,運動開始に際し最も早く動作の起こる部位と最終伸展域での肢位を分析した。また同時に,動作の行い方にも着目した。
【結果】
体幹伸展時に骨盤の前方移動によって体幹の伸展を行った群(以下,骨盤移動群)4例,体幹伸展時に骨盤の移動を余り伴わずに体幹の伸展を行った群(以下,骨盤移動なし群)5例,に分類することができた。また,骨盤移動群では,脊椎の伸展可動性テストにおいて腰椎レベルでの伸展はみられるものの胸椎レベルでは余り認めれられず,骨盤移動なし群では,特に股関節伸展可動域の低下が特徴的であった。
【考察】
今回の動作分析では,骨盤移動群では,股関節の過剰な伸展が出現しているが,胸椎レベルでの動きがみられず,結果として腰椎部での過剰な伸展を引き起こしていると考えられた。骨盤移動なし群では,胸椎レベルでの伸展は骨盤移動群に比べてみられるものの,股関節伸展がみられず,やはり腰椎部での過伸展を引き起こす原因と考えられた。今回の結果から,骨盤移動群,骨盤移動なし群共に,腰椎部での過伸展がみられ,理学療法におけるメカニカルストレスの減少を考える上で,骨盤移動群では,胸椎レベルでの伸展可動域の改善および運動療法を,骨盤移動なし群では,股関節伸展可動域の改善および運動療法を行うことで腰椎部へのメカニカルストレスを改善させることができるのではないかと考えられる。
今後はより対象者を増やし,さらに運動療法の効果も検討していかなくてはならない。