抄録
【はじめに】我々は第38回日本理学療法学術大会で在宅介護職員の腰痛有訴状況について報告したが,今回は更に施設介護職員を対象としたアンケート調査を実施した上で腰痛有訴状況に関する両者間での比較検討を行い,若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】対象は常勤の在宅介護職員(以下在宅群)50名と施設介護職員(以下施設群)22名の計72名であり,アンケート調査は無記名による自己記入式で行った。質問項目は年齢や性別,勤続年数,現在の腰痛有訴状況及び原因(業務の関与・作業内容),業務時に多い作業内容,腰痛への対応,作業環境等である。
【結果】回答者は69名(回収率95.8%)であり,年齢は在宅群32~63歳(平均50.2±8.2歳)・施設群23~52歳(平均34.4±10.0歳),性別は男性6名・女性63名,勤続年数は在宅群0~12年(平均5.3±2.7年)・施設群0~9年(平均5.0±2.9年)であった。腰痛有訴者は在宅群33名(66.0%)・施設群15名(78.9%)であり,腰痛の原因では「業務」が施設群で14名(93.3%)と有意に多く(p<0.05),業務時に多い作業内容では施設群が食事(84.2%)や更衣(94.7%),排泄(100.0%),オムツ交換(94.7%),入浴(94.7%),体位変換(63.2%),起き上がり介助(89.5%),移乗動作(84.2%),搬送(36.8%),シーツ交換(68.4%)において,在宅群が掃除(66.0%)や台所での調理(54.0%),買物の介助(46.0%)においていずれも有意に多かった(p<0.01)。また、腰痛への対応では在宅群(87.9%)の方が多く行っており(p<0.01),作業環境では「室温が不適切(寒い)」(45.7%)が在宅群で,「時間的余裕がない」(93.3%)が施設群で有意に多かった(p<0.01)。
【考察】今回,腰痛有訴状況に関しては両群間で年齢や勤続年数に有意差は認められなかったが,現在の腰痛の原因として施設群では特に業務に起因していることが明らかになった。これは施設群の方が排泄介助やオムツ交換,更衣や入浴介助といった多種の援助活動が要求されると共に,数多くの利用者を対象としている為と考えられる。一方,在宅群では掃除や台所での調理,買物といった家事援助によるものが多く,このうち掃除や調理では姿勢が,買物では荷物の重量や抱え方等の問題点が考えられ,更に詳細な調査が必要と思われる。また、腰痛への対応では在宅群の方が時間的な余裕の点も含めて対応できているのに対し,施設群ではこの点でかなり厳しい状況下での勤務を強いられている現状が窺える。但し,在宅群でも作業環境の点で問題が生じている場合もあることから今後は自己予防手段等を考慮していかなければならないと思われる。