理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 738
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骨・関節系理学療法
腰痛症患者に対する腰部への徒手療法と腰痛体操の持続効果の比較
*淡路 静佳佐藤 香織高橋 美希子松本 香好美
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抄録

【はじめに】
 腰痛症患者に対する理学療法の治療手技には、徒手療法や腰痛体操があり、中でもマイオセラピーは筋緊張の改善や疼痛の軽減目的に行われている。また、腰痛体操の中でもウィリアムズ体操は、主に腰椎前弯の減少を目的とし、運動も簡単な為、広く用いられている。腰痛症に対するマイオセラピーと腰痛体操に関する治療効果はこれまでに多く報告されているが、腰痛の改善の程度や治療効果の持続性を同時に比較・対照した報告は少ない。そこで今回、マイオセラピーと腰痛体操の両者間における腰痛の改善とその効果の持続性について検討したので報告する。
【方法・対象】
 対象は当院併設の介護老人保健施設の介護職員で、腰痛を有する16名(男性2名、女性14名、平均年齢25.3±6.25歳、BMI20.3±3.00)である。方法は、対象者を腰部へのマイオセラピーを実施する群(A群)と腰痛体操を実施する群(B群)にランダムに分け、平成15年10月20日から1ヶ月間、A群に対し、脊柱起立筋、腰方形筋へマイオセラピーを、B群へは、ウィリアムズの腰痛体操の一部で筋力強化運動を含まないストレッチ運動のみを指導、実施した。評価項目は指床間距離(FFD)、下肢挙上テスト(SLR)、体幹可動域テスト(ROM)、体幹筋力(MMT)、歩行速度で、治療開始前後と1週間後、2週間後、1ヶ月後にそれぞれ評価した。また主観的評価はVisual Analogue Scale(VAS)にて、各治療の前後で行った。統計処理にはStatView5.0を使用し、Student-t検定、ANOVAを用いた。p値が0.05以下を有意とした。
【結果】
 治療前後において、両群共に体幹のROMに有意差を認めた(p<0.05)。改善幅はA群の方が大きかった。体幹伸展では、治療前から2週間後、1ヶ月後にかけて改善傾向を示した。VASでは、A群B群ともに3項目で有意に改善した(p<0.05)。FFDやMMTには有意差が認められなかった。また、持続的な効果については、ばらつきがあり、一定した効果は得られなかった。
【考察およびまとめ】
 今回、マイオセラピーと腰痛体操の効果を比較したが、両群共に体幹のROMとVASが有意に改善した。VASにおいては、腰痛体操のみを行うB群に対し、A群では直接的に治療者が被検者の腰部に用手することから、心理的側面での効果もあったのではないかと推測する。残念ながら、今回はマイオセラピーの持続効果については、はっきりとした結果が得られたとは言えないが、主観的な観点からも、マイオセラピーは腰痛の軽減に即時的な効果のある手技であると示唆された。今後はさらに評価項目を増やし、経時的にこれらの持続的効果について検討していきたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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