抄録
【はじめに】我々は，股継手が内側に位置するPrimewalk(以下PW)を開発し内側系装具歩行について検討してきた．現在初期訓練としてまず安静立位での立位バランスを評価し，その後，平行棒内歩行，ロフストランド杖歩行へと移行していきPW歩行を学習させていく．しかし，早期に安定したPW歩行を学習させるためのポイント，初級者と上級者の違いなどについての客観的データを用いた報告は少ない．そこで今回，歩行能力と静的立位バランス能力の関連性について調査しPW歩行学習について検討した．
【対象と方法】対象は，訓練室内PW歩行が監視レベルで可能な完全対麻痺者4名とした．方法は，歩行能力の評価として平地を10m歩行させ，歩行速度，歩幅，歩調を測定した．また，静的立位バランスの評価としてアニマ社製重心動揺計を用い総軌跡長，X（左右）方向軌跡長，Y（前後）方向軌跡長，実効値面積，左右荷重割合を算出した．その際，両手支持無しでの安静立位，片脚を5cm，10cm，15cmステップさせた肢位の片側3肢位ずつ両側6肢位行い，合計7肢位測定した．各肢位30秒間を2回測定し2回の平均を求めた（サンプリング周波数50Hz）．
【結果】歩行能力，10m歩行速度平均12.2±7.6m/min，歩幅平均27.1±16.4cm，歩調平均43.2±11.4steps/minであった．歩行能力と静的立位バランスとの関係として，安静立位でのCOPの軌跡は歩行能力が高い者程縦長の形状を示し，総軌跡長と歩行能力に負の相関関係が認められた．ステップ肢位の結果として，最も歩行速度が遅い者は左15cmステップ肢位にて30秒間で6回バランスを崩し，次に遅い者は右15cmステップ肢位にて1回崩した．また，片側下肢をステップする程実効値面積は増加する傾向が認められた．歩行能力とステップ肢位での左右荷重バランスとの関係では，歩行能力が高い者はステップ下肢にかかる荷重の増加が左右のステップ肢位で一定であった．
【考察】歩行能力とCOP軌跡の形状との関係から，左右の安定性の学習は初期段階でおこることが考えられ，訓練では前後だけではなく左右へのバランス訓練も重要であることが分かった．ステップ肢位は歩行能力が低いと保持は困難となるため，ステップ評価によりある程度歩行能力が予測可能であり，左右荷重割合の結果からスッテプ下肢にかかる荷重の増加が左右のステップ肢位で一定であることが歩行能力向上のために重要で，ステップ肢位で重心をコントロールする姿勢制御学習の必要性が示唆された．そして，安静立位だけでなくステップ肢位においてもC-postureを安定して保持可能にするための関節可動域の維持，装具の微調整が必要であると考えられた．今後，動的立位バランスの評価を加え，歩行能力との関連性について検討していきたい．
