抄録
【目的】肩関節疾患を有する患者に対し自動運動を行わせる際、筋力低下、ROM制限、疼痛などの要因で代償運動を伴うことが多く見受けられる。これは外旋運動においてもよく見受けられ、口頭での指示や視覚でのフィードバックを用いても代償運動を抑えることは困難である。そこで台を使用する運動方法が、肩関節の代償運動を抑制し、外旋運動の主動作筋である棘下筋の筋活動を十分に働かせることが出来ると考え、視察による動作分析と筋電積分値を用いて臨床への有用性を検討した。
【方法】対象は上肢に障害がない健常成人21名(男性8名、女性13名、平均年齢25.0±2.9歳)であった。運動方法は、実際の患者の代償運動を再現させるため、外旋方向に対しゴムバンドの抵抗を付加させ、60回/毎分の運動速度で回旋中間位から最大外旋位まを1回として行い、20秒間休憩を挟み3回記録した。この外旋運動を立位にて肘関節を90度屈曲させ、条件提示なし(条件1)、台に肘を置いて肩関節外転0度に保持する方法(条件2)の各条件を行わせた。運動の観察は、被験者の背側からビデオカメラにて撮影し、視察にて動作分析を行った。筋活動の測定は、表面筋電計MEB-2200(日本光電製)を使用した。被験筋は棘下筋、大円筋、三角筋中部線維、三角筋後部線維を選択し、運動開始から1秒間の筋活動電位を3回記録し、筋電積分値を求めた。その筋電積分値を、各筋の抗重力位で1kgの重錘バンドを付加し保持させ筋活動電位が安定している1秒間の筋電積分値で除してパーセントで表現した(%iEMG)。そして各条件で%iEMGの平均値を算出し、paired t test(有意水準5%未満)を用いて条件1と条件2を比較検討した。
【結果】条件1において代償運動は21名中19名に認められ、その内訳は肩関節外転6名、伸展1名、内転2名、体幹右回旋と肩甲骨内転のみは10名であった。その19名の代償運動は条件2で、肩関節外転0名、内転0名、伸展0名、体幹右回旋と肩甲骨の内転は17名であった。条件1で肩関節外転の代償運動が認められた群では、条件2で棘下筋の筋活動量に有意な増加を認めた。また同じ群において三角筋後部線維の筋活動量は6名中4名に低下する特徴が見られ、2名はほとんど変化が見られなかった。
【考察】肩関節外転の代償運動は、台を使用し肘を固定することで代償運動を抑制し、肩甲上腕関節に対し水平―垂直軸(回旋軸)の運動を強調させ、棘下筋の筋活動を働きやすくさせると考えた。同時に個人で特徴を見ると代償運動を抑制したものの、三角筋後部線維を等尺性収縮させる可能性も示唆された。これらから、台を使用した方法は臨床において運動の様態に注意を払う必要はあるが、外旋運動を指導する際有効な手段の一つになると考える。