抄録
【目的】変形性膝関節症(以下OA)のうち最も多いのは内側型であり、その装具療法として下腿のアライメントを改善する目的で外側ウエッジ(以下LW)が広く用いられている。本研究は歩行解析装置を用いてOA患者における4種類の足底挿板(アーチサポート(以下AS)、LW、AS+後外側ウエッジ(以下PLW)、PLW)による歩行への影響について定量的に計測し、その効果について検討することを目的とした。
【方法】内側型OAの患者6例12膝(男性2例、女性4例、平均66.3歳)を対象とした。なお、計測に先立ち、主治医により本研究についての説明がなされ、全対象者から同意が得られた。立位単純X-pより北大式病期分類を用いて分類した(stage2;3膝、stage3;6膝、stage4;3膝)。使用機器はキスラー社製床反力計、Oxford Metrics社製三次元動作解析システムVICON370で、測定方法はVicon Clinical Managerの方法に従った。被験者は靴、靴+足底挿板4種類の5通りでそれぞれ3回ずつ、計15回の歩行を行い、サンプリング周波数60Hzで計測した。関節モーメントは身長と体重で除して正規化した。一歩行周期における膝の関節角度とモーメントを求め、病期別に立脚前期の最大値を比較した。
【結果と考察】靴のみでの結果、病期の進行に伴って屈曲角度と伸展モーメントが減少し、内反角度と外反モーメントは増大する傾向を認めた。このことから、OA患者は病期の進行に伴い、立脚中のlateral thrustが強まり、そのために外反筋力を要すると考えられ、また、膝の疼痛を抑えるために屈曲を極力抑えて立脚していると推察された。足底挿板を使用したところ、stage2ではLW、AS+PLW、PLWによって内反角度および外反モーメントの減少と屈曲角度および伸展モーメントの増加を認め、stage3、4ではPLWでのみ同様の結果を認めた。このことから、PLWを使用することによって膝関節内反変形を軽減させ、アライメントが改善されたことで膝関節内側部の過度な接触が軽減し、膝関節屈曲が大きくなったのではないかと考えられた。また、病期の進行に伴い、足底挿板による影響が小さくなっており、stage2では足底挿板の適応と考えられるものの進行例ではその効果が小さいと考えられた。一方、LWでは立脚相全体において下腿のアライメントを修正すると考えられたが「内股になってしまう」との訴えが多く聞かれ、却って歩行しづらいことが明らかとなった。以上のことからLWよりもPLWの方がより効果的であると考えられた。
【まとめ】内側型OA患者を対象に歩行解析を行い足底挿板の影響を明らかにした。その結果、後外側ウエッジでは歩行時の膝関節内反角度を減少させ、膝関節アライメントを改善させていることが分かった。また、病期の進行に伴い、足底挿板の効果が少なくなることが分かった。