抄録
【目的】腰椎椎間板ヘルニアに対する手術法には,Love法や経内視鏡的椎間板摘出術(以下,MED法)などがある.Love法では摘出する椎間板の上下2椎弓から筋の剥離を行うが,MED法は直接筋に内視鏡を挿入し,椎弓からの筋の剥離は行わない.そのため,Love法に比べて低侵襲であり,入院期間の短縮が見込まれる.MED法における術後の筋力を検討した研究は極めて少ない.そこで今回,腰椎椎間板ヘルニアにおけるMED法とLove法の手術侵襲が,術後の背筋力に対する影響を比較検討した.
【方法】対象は,当院で下位腰椎の単一椎間の椎間板ヘルニアに対し手術を施行した患者32例であった.そのうち,MED法は(以下,M群)22例(男性9例,女性13例),平均年齢40.0±10.7歳,Love法(以下,L群)は10例(男性8例,女性2例),平均年齢50.1±13.6歳であった.術前,術後1週,術後2週における背筋力,指床間距離(以下,FFD),日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下,JOA スコア),術後3ヶ月のMRI所見について検討した.背筋力の測定には、Dynatracを用いて背筋群の等尺性最大筋力を3回測定しピーク値を体重で除した値を使用し,男女比や年齢による影響をなくすために改善率を用いて比較検討した.統計学的検討にはt検定と回帰分析を用い,有意水準を5%未満とした.
【結果】 M群の背筋力の改善率は,術後1週で6.6±47.6%,術後2週では38.1±90.3%であった.L群は,術後1週において25.8±61.1%,術後2週では,79.2±97.5%と著明な改善が見られた. M群における術後のFFDの経過は,術後1週で平均6.34±13.1cm低下し,術後2週では術前よりも平均1.9±10.0cm改善した.一方L群では,術後1週で平均17.1±30.6 cm低下し,術後2週での低下が平均5.7±31.3cmであった. JOAスコアの自覚症状の項目は,M群では術前平均4.4点に対し術後1週では平均6.6点,術後2週では平均6.8点とやや改善された.一方L群は術前平均2.8点に対し術後1週では平均7.0点と著明に改善され,術後2週では平均7.4点であった.術後1週における改善率は,M群は平均44.1±39.5%,L群は平均61.3±32.4%であり, L群において高値を示したが,統計学的な有意差はみられなかった.術後1週における,背筋力と自覚症状の改善率の間には,有意な相関が見られた(r=0.375,p<0.05).
【考察】両群ともに術後背筋力は,術前と比較して改善が認められた.しかし改善率はL群のほうが高値を示した.この原因としてL群のJOAスコアが低下して疼痛の強い症例が多かったことが考えられる.今後さらに症例数を増やして検討する必要がある.術後3ヶ月のMRI所見では,L群の方が輝度変化を示している部分の面積が大きかった.L群では手術侵襲による傍脊柱筋の瘢痕形成が広範囲に及んでいたことから,腰椎の可動性を低下させたためにFFDの改善率が低下したものと思われる.したがって傍脊柱筋への手術侵襲を考えた場合,MED法がより効果的であると考えられた.