抄録
【はじめに】
近年下肢動作において大腿四頭筋の各筋、大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、外側広筋(VL)の違いは興味深く、特にVMは傷害により萎縮しやすく回復しにくいとされている。VM/VL比が低下することが膝関節伸展不全(以下extension lag)の一つの原因と考えられているが、また一方では、extension lagの原因はVM/VL比が低下することではなく、2次的に大腿四頭筋は廃用性萎縮を起こしているのみであるとしている。そこで関節リウマチ(以下RA)における人工膝関節置換術(以下TKA)後の患者でextension lagのあるなし、及び運動方式の違いによる筋電図学的検討を行い、若干の知見を得たので報告する。
【対象】
extension lagあり群として、RA患者7名9膝(全例女性、平均年齢58.0±3.3歳、術後1.6±0.7ヶ月)extension lagなし群として、RA患者5名5膝(全例女性、平均年齢61.2±11.3歳、術後17±22.2ヶ月)。なお被験者には事前に今研究の趣旨を説明し同意を得た。
【方法】
筋電図の測定には(Noraxon社製MyoResearch)を使用した。測定筋は、VM、VL、RF遠位部・RF近位部の3筋4ヶ所とし、十分皮膚抵抗を落とした後、表面電極を貼付した。計測方法は最大随意収縮時の筋放電を膝関節90度で記録した。その後、膝伸展を意識させながらのSLR・セッティング(以下QS)・内転収縮+QS(膝関節にあてられた徒手抵抗に対して股関節内転筋の最大等尺性収縮+QS)・外転収縮+QS(膝関節にあてられた徒手抵抗に対して股関節内転筋の最大等尺性収縮+QS)の計4種目をランダムな順序で測定し、測定期間は十分にとって行った。解析方法は、最大随意収縮(MVC)のEMG積分値を100%とした相対値(%MVC)を使用し、二元配置の分散分析で統計処理を行った。
【結果】
1)extension lagのない群の方がVM、VL共に有意に高い値を示した。(P<0.01)
2)大腿直筋にのみ運動様式による違いが出た。SLRが内転・外転収縮+セッティングよりも有意に高い値を示した。(P<0.01)
3)VM/VL比は運動方式・extension lagのあるなし、どちらにおいても有意な値は出なかった。
【考察】
本研究結果よりextension lagの有る無しにおける違いはVM・VLが低下していることであり、VM/VL値の値には違いはないとされた。これは、extension lagの原因に2関節筋の影響よりも単関節筋の影響が強いことが示唆される結果と考えられた。